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何もしなくていい、動かなくていい。
まるで人形のようだと思った。
テレビの中や夏生が持っている雑誌で見る人形みたい。
飼われているペットの方がいくらか自由なんじゃないかと、心のどこかで思っているのかもしれない。
夏生が静かに僕の髪を撫でる、すぅっと指で梳かれるとピクリと身体が揺れる。
長い髪を飽きないのかと思う程ずっと撫でているだけの夏生を、僕は見ている事しかできなかった。動こうとも思っていないからピクリと反応してしまった身体に首をかしげる。
「渚、綺麗な髪だね」
「そうかな…」
「もう少し伸ばす?短い髪でも渚はとっても可愛いと思うけど」
夏生がこうして、僕の伸びてきた髪を切ろうと悩むときは至極楽しそうにしている。髪型なんてどうでもいいのに、夏生が望む姿にしか僕はなれないのに。
長い髪、切ってしまえばまた伸びるだけ。
きっと永遠に同じままの形でなんて留まる事はない。
「切ってしまえば……私を嫌いになる?」
小首を傾げてしまえば、夏生はビックリしたように大きな瞳を見開いてそれから頬を染めながらとろける笑みと砂糖のように甘く低い声で私の頬に手をあてた。
「そんなわけ、ないよね」
「うん。夏生…」
「渚を嫌いになんてなれるはずないじゃない」
「じゃあ、長いままでいようかな」
するりと紐を解くように僕の髪で遊ぶ夏生が嗤うのを見て、僕も表情に笑みを浮かべた。
願わくばこれが真実の笑顔であればいいのに。
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