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ジャリ…と、無機質な音が背後で鳴る。
「あれえ?もう逃げないの?
つまんないのー
せっかく君のために広げてあげたのに」
「……っ」
振り返る事すらせずに、また走り出そうとしたが
「もういいや。飽きた」
「! な…っ」
ぐにゃりと空間が歪んで、続いていたはずの道はあっという間に行き止まりへとその姿を変えた。
ひやりとした壁が行く手を阻む。
「遊びにもなんなかったなー」
「ひ…っ」
赤光に映し出されるその顔は愉しそうに歪んでいるのに、赤く灯るそれからは一切感情が読み取れない。
男が移動するにつれて足元の赤黒い液体がまるで陰のようにズズズ…と動いていく。
逃げなければ。
そう思うのに金縛りにあったように身体は動かなくて、情けなくガタガタと震えている。
壁に張り付いて後ずさる事も出来ない俺を見据えながら、男はバシャリと水溜まりを踏み付けた。
直後、足元にあった水溜まりがまるで生き物のように蠢き始め形を成していく。
「君もこの中に加えてあげるよ」
大きく長い虫のようなそれが、ぽっかりと口を広げた。
「食べちゃえ」
物凄いスピードで自分に向かってくるそれを、俺はまるで他人事のように見ていた。
自分はこのままあのおぞましい物体に襲われて死ぬのか。
こんな現実離れした、訳の分からないまま。
…なんてツイてない最期なのだろう。
涙が、頬を伝った。
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