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「にゃあ」
その鳴き声はこの場全てに、影を落とした。
一つ、また一つと影は増え、頭上から落ちる沢山の影が、月光に照らされ伸びている。
「ナ~オ」
見回せば、闇に光る一対の眼が俺たちを取り囲んでいる。
そして、一匹の猫の声を合図に一斉に男に飛びかかった。
「っ、ダメだ!」
先程の光景が脳裏に蘇る。
行ったら駄目だ。殺されてしまう。
だが、止めようと手を伸ばした視界は、突然薄紫色の膜で覆われた。
身体が宙に浮いている。
まるで大きなシャボン玉の中にいるようだった。
「終わるまでそこにおれ。邪魔じゃ」
「待ってくれ!」
「何…」
「あの猫たちを止めてくれ!このままじゃささっきの仔みたいに…ッ」
そう懇願すると彼はその薄紫の瞳を見開いた。
「お主…」
薄紫に光るアーモンド型の眼がじっと俺を見る。
突き刺さる視線に不安を覚えたが
彼は特に何も言う事なく顔を逸らし、それまで被っていたフードを取り去った。
現れた風に靡(なび)く漆黒の髪。
それはまるで夜を溶かしたようだった。
「言われずとも。ワシも…猫は大事じゃ」
その言葉に僅かな引っかかりを覚えたが、問う間はなかった。
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