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「お主のせいで奴を逃がしてしまったじゃろうが」
「へ? えと、ご、ごめん」
「それしきの謝罪では済まぬわ。ワシは失せよと言うたはずじゃ」
ゴゴゴとお怒りの波動がビシバシと伝わってくる。
先程の男とはまた違う威圧感が、俺の身体を竦(すく)み上がらせる。
年齢は確実に自分より下だろう。
見た目にそぐわぬ古風な喋り方も気になるけれど、今はそのご立腹ぶりに謝る事しか出来ない。
「そ、それは悪かったと思ってる。腰が抜けちゃって…折角君が助けてくれたのに足手まといに、、」
「助けた? 何を言っている」
「…え?」
「ワシはお主を助けたつもりなど微塵もない」
助けたつもりは…ない?
「え、でも死にたくないなら逃げろって…」
「奴は生者を殺め、その血肉や魂を糧に自身に取り込む事で力を得る。
そんな輩にわざわざ餌を与える訳がなかろうが」
「え、餌って…」
衝撃的な事実に動揺が走る。
「故に、お主を救うたつもりなど…」
「うわあああ何それ怖ぁ!俺お化けとかホラーもの全っ然ダメで、あんなのに食べられてたかと思うともう鳥肌が!」
ぶつぶつと粟立っている腕を捲って、「ほら!」と見せる。
「……………お主、阿呆なのか」
「え?」
「もっと他に言う事が………いや、いい」
「?」
彼は「調子の狂う…」とぼやくと大きく溜め息を吐き出した。
あ、そうだ。一気に色々あり過ぎて忘れてたけど
「助けてくれて、ありがとう」
「…は?」
色々まだ整理できてないけど、これだけは分かる。
彼は助けてくれたつもりはないみたいだけど、それでも俺にとっては結果的に助けられたのは変わりない。
だから、お礼を言いたかった。
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