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「…お主、やはり大馬鹿者じゃろう」
「ええ!? 何で!?」
さっきは阿呆(?)だったのに?!
「人の話を聞いておったのか。
それに、あれを『お化け』などと言えるお主の神経はどうなっておる。
あれはそんな可愛いものではない」
「いや、お化けは可愛くないよ? 苦手だし」
「…そういう意味ではない。…まあ良い。お主、少し頭を貸せ」
「頭?」
何故と聞き返す暇もなく彼は俺の額に手を当てた。
その掌から薄紫色の光が漏れ出す。
何度見ても、その瞳と同じ色の光は美しい。
見惚れるように、じっとしていると彼の手が離れていった。
「何したの?」
「!?」
別段おかしな事を尋ねたつもりはなかったのだが、心底驚いたような反応を返されてこちらも釣られるように驚く。
「効いて、いない…?」
驚きから怪訝げな険しい表情へと変わっていく。
その剣呑な雰囲気にどうしたのだと聞くのも躊躇われて、じっと待つ。
「…使えるか」
「え?」
漸く返ってきた反応にほっとしたが、落とされた声は小さく聞き取れなかった。
「行くぞ、お前達」
フードを被り直し、スタスタと歩いていく彼の後ろ姿を猫たちが鳴きながら着いていく。
そして、少し歩いた所でくるりと振り返って彼は言った。
「人間、さっさと家に帰れ。それは貸してやる」
それ、と示された方向へと目をやると
俺の傍にちょこんと座る一匹の黒猫。
「今日の事は他言は無用じゃ。したくばしても良いがな」
「え、待っ…!」
次に目を向けた時にはもう、沢山の猫たちと彼の姿はどこにも無かった。
後には残った只一匹の猫の鳴き声だけが寂しげに響いたのだった───。
【序章 終】
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