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【第一章】欺瞞と信頼1
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駅前にある大型ショッピングモールを和気藹々(わきあいあい)と行き交う老若男女が、上の階から下の階までを埋め尽くす。
そんな賑やかな傍らで、俺は今日も元気良く働いていた。
「久住君、そこの掃除終わったら休憩行ってきて良いよ」
「はい!」
清掃会社のアルバイト。これが俺の今のバイト先。
前のバイト先を首になった時はどうしようかと思ったが、珍しく幸運にも直ぐに見つかった。
安いが、無いよりはマシだろう。
何とか生計はギリギリ立てれている。
休憩室のイスに座って、一気にお茶を飲み干す。
そして、いつものように手帳から徐(おもむろ)にとある物を取り出す。
手元には一枚の紙切れ──赤い文字が蛇がのた打つように書かれている御札(おふだ)のようなもの。
穴が空く程にそれをじっと凝視する。
忘れもしない。あの日突如として身に降りかかった奇々怪々な出来事。
あの時の記憶が色褪せぬまま、あれから1ヶ月が過ぎようとしていた。
颯爽と現れて、気まぐれな猫のように消えてしまった彼。
そして、その彼が「貸してやる」と言った猫も
俺が家に着いたと同時にこの一枚の紙切れとなってその姿を消したのだった。
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