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「──でさあ」
と、その時、公園の入り口の方から複数の声がした。
高校生くらいだろうか。
アイスを片手に4、5人の制服を着た男子が入ってくるのが見える。
公園へと足を踏み入れた彼らは、あろうことか真っ直ぐにこちらに向かってきている。
何となく焦りを覚えた俺は八代君を見るが、彼は別段慌てた様子もなく、ただ彼らをその薄紫色の瞳で見ていた。
ワイワイとした楽しそうな声が迫る。
…だが、もう少しで俺達がいる木陰に足が入るという所で
何故か彼らはピタリとその動きを止めた。
「…なあ、あっちに座ろうぜ」
「あれ? 何で俺達こっちに来たんだっけ?」
「さあ? ベンチも無いのになー」
……え?
方向転換し、一つ隣の太陽が照りつける熱いベンチへとぞろぞろと向かっていく一行。
その様と発言に、俺はポカーンと口を開けて見ていた。
目の前で起こった不思議な光景に開いた口が塞がらない。
「結界じゃ」
「へ?」
「…何じゃ、そのだらしのない顔は」
指摘され、慌てて口を閉じる。
「ようく見よ」
空を指差す彼に従い、見上げると薄っすらと薄紫色の膜が張ってある事に気付く。
よくよく見渡せば、それは俺達を囲むようにドーム状になっていた。
「人除けの結界じゃ。他者の潜在意識に作用し、この場への認識を逸らす事が出来る。
無論、あちら側からこちらの姿は見えん」
「……………」
「また口が開いておるぞ」
いやだってこれは開くでしょ…!
どうにかこうにか口を閉じる事に悪戦苦闘していると、八代君はぼぅっと学生達を見ていた。
その視線は、彼らが公園から出ていく最後の瞬間までずっと注がれていた。
「──ワシはもう行く」
「え、どこに?」
「どこでも良いじゃろう。お主の質問には答えてやった。それでもう良いはずじゃ。
…お前達、『戻れ』」
その声を聞いた猫たちは淡く身体を光らせると、光の軌道を描き、八代君の手元に札の姿となって集まっていった。
札の束を確認すると、彼はそのまま公園の3メートルはあろうフェンスを軽々と乗り越え
引き止める間もなくどこかへと消えてしまった。
「…あれ? そういえば、俺なんで八代君の結界に入れたんだろう?」
そんな俺の疑問を残して…。
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