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男の手に山田さんの姿が無い。
まさかと首を後ろに向けると、コンクリート塀に投げつけられている山田さんの姿がそこにはあった。
「あはは! 見てよ、デブすっごい飛んだ! 面白ーい!」
ケラケラと子供のように嗤う男に、俺は冷や汗が止まらなかった。
面白そうに腹の底から声を上げて嗤うその姿は、残忍な事をやっている自覚が無さすぎる。
まるで、純粋な子供の悪意のない悪意がそのまま大きく成長してしまったようだった。
「さあてと、それじゃあ遊ぼっかー。何して遊ぶ?」
「!」
じりじりと近づいてくる男から、無意識に足が後退してしまう。
「あ、遊ぶって…この前飽きたって俺の事殺そうとしてきたじゃないか」
「まあね。でも、ほら人の気は移ろいやすいって言うでしょぉ?…ぼくねぇ君に興味が湧いたんだぁ」
「な、なんで」
「君っていうか、君の『魂』になんだけどねー」
「俺の、魂?」
「そう君の魂。その真っ白な魂を黒く染めて食べたらどんな味がするんだろうなぁって」
「食べ…っ」
恍惚とした表情を浮かべ、男は俺の胸の辺りを見ている。
ぞっとした。
「ねえ、鬼ごっこしようよ。前の続き。ただ食べるだけじゃつまらないしさぁ。
僕から逃げきれたら見逃してあげるよ」
「何、言って…」
「1分だけ待ってあげる。捕まったら…ま、どうなるかは、分かるよねぇ?」
「…っ!」
「ほらほらー逃げないのー?もう数え始めちゃうよー良いのー?」
「いーち、にーぃ、さーん…」と本当に数え始めた男を横目に、倒れている二人に視線を走らせる。
「っ…」
どうか無事でいてくれと、そう願って走る事しか出来なかった。
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