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辺り一面を覆いつくす程の光が、宗介の身体――否、魂から放たれた。
その光波に、九重の式神は一瞬で吹き飛び、跡形もなく消え去った。
更に、その余波は留まる事を知らず、九重の身体を深く切り付けるだけでは飽き足らず
ここいら一帯を覆い囲んでいた九重の結界までもを破壊してしまった。
「え、何…いまの」
ドクドクと血が溢れ出る自身の上半身と無くなった右腕を呆然と眺めながら、傷口をゆっくりとなぞっていく。
手に付いた血を自分の顔に押し当てると、九重はこれまでにない程の不気味な、それでいて酷く愉しそうな笑みを浮かべた。
「あーあ、やられちゃった…」
それだけを言うと、九重は八代の存在など忘れたかのようにどこかへと歩き出す。
「待てっ、…う!」
先程の腹部の鈍痛とは違う、鋭い痛みが八代を襲う。
服をたくし上げると、九重の式神の一部がまるでナイフのように刺さっていた。
いつの間に仕込んでいたのか。恐らく、正拳突きを喰らった時だろう。
ズボッとそれを抜き、紫炎で焼き、止血する。
「おい、お主…っ、宗介!」
九重の気配がない事を確認すると、八代は宗介に駆け寄った。
「う…ぅ」
息はある事にほっとする。
そして、血が滲む宗介の左肩の傷を見て、八代は驚きに息を飲んだ。
間一髪で駆け付けた時、宗介は九重の式神に貫かれていた。
九重の式神は『穢れ』の塊だ。普通の人間ならば、喰らえばひとたまりもない。
瞬く間に魂が黒く穢され、悪霊へと化してしまう。生きながらにして死の苦痛を味わうのだ。
しかし、いま宗介の左肩は傷はあるものの穢れの痕は完全に消えていた。
「まさか…浄化、したのか…?」
境内には虫の音だけが、場違いに涼し気に響いていた――。
【第一章 終】
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