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「ただの阿呆なのか、お人好しなのか」
…ような気がしただけで、瞬きを繰り返すもそこにあるのは相変わらずの仏頂面で。
まるで夢…いや幻…はたまた蜃気楼か。それぐらいに見間違いかと思う程の出来事に、なかなか動揺が治まらない。
「何じゃ、呆けた顔をして」
「や…何でも…ない、です。はい」
「? おかしな奴よ」
幻覚が見えるなんて、もしかしてまだ熱でも残っているのだろうか。
あ…そういえば
「山田さんと吉田さんは!?」
「次、突然叫んだらその口縫い付けるぞ」
「ご、ごめん…」
ぴゃっと飛び上がりつつ、口元を手でガードする。
「心配はいらん。が…それも含め、お主に話さねばならん事がある」
「何?」
「その前に、まずお主はその怪我を治す事に専念せよ。話はその後じゃ」
「どこ行くの?」
そう言うと、八代君は立ち上がって玄関へと向かう。
外を見るともう随分と陽が落ちている。
「ワシはまだこの辺りでやらねばならん事が残っている。お主は安静にしておれ。くれぐれも外へ出るでないぞ」
「う、うん」
この怪我だから碌に動けはしないのだが、釘を刺され、無意識に姿勢を正す。
俺の返事を聞くと、八代君はテーブルの上に置いてあった俺の手帳を手に取ると、挟んであった札を取り出した。
「*****」
そして何かを呟くと、ポウ…と薄紫色に光を帯びた札が猫の姿へと変わった。
「この者が勝手に外に出ぬよう、見張りを頼む。何かあれば報せよ」
「にゃ」
分かったと頷くように鳴く猫が可愛くて悶えそうになる。
「あのー…仕事は…?」
「…出るな、と言うたはずじゃが?例外はない」
冷気が漂う視線を向けられて、慌てて何度も頷く。
「行ってらっしゃい」
「──…」
「? どうかした?」
「いや…何でもない」
「そう?」
扉の向こうに消えていくフード姿がやけに気になったのだった。
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