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「まったく…管轄外じゃというのに」
眉間にしわを寄せながら八代君が一歩、敷地から足を踏み出す。
すると、まるでその気配を感じ取ったかのように、辺りに漂っていた人魂が一瞬にして散開した。
あの消えそうな魂以外は、こちらを遠巻きに見ているように距離を取っているようにみえる。
「や、八代君、これは…?」
「本能的に察知するのじゃろう。自分をあの世に連れていく者だと」
そういえば、八代君のお仕事はこちらでいう警察のようなものだと言っていた事を思い出す。
さながら幽霊達は警察から逃げている逃亡犯と同じ心境という事だろうか。
などと考えている間に、消えそうな人魂の傍まで寄ると懐からチリン…と涼やかな音を立てる鈴を取り出した。
「それは?」
「黄泉送りの鈴と呼ばれる物じゃ。あの世の道具よ。本来は手に負えなくなった悪霊を問答無用であの世へと送るためのものじゃが、これはもう逃げる気力も自力であの世へと渡る事は出来んじゃろうからの」
「瞬間移動みたいなもの?」
「…………そうじゃな」
今の間は…一体何でしょうか。
「始めるぞ」
―――チリー…ン、チリー…ン
「*****…」
左手で印を結び、右手に掲げた鈴が切ない音色を奏で始める。
消えかけていた魂がポゥ…と淡い光を放ち始めかと思うと、徐々に分解されていくように空に溶け出していった。
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