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どうして、二人が俺の事を忘れているのか、二人に何があったのか
そんな事ばかりが頭を占めて、困惑と、衝撃と、こんな現実を認めたくないという気持ちがごちゃ混ぜになって
悲しいとも辛いとも思えずに
ただただ呆然と立ち尽くす事しか出来ずにいた。
…けれど、一人になって
一通りの疑問を出し尽くせば落ち着いてきて
そうすると段々と冷静になってきた頭はまた別の事を考え始めた。
八代君は当然、あの二人が俺の事を忘れているのを知っていたはずなんだ。
こんな苦しい思いをするくらいなら、いっその事知らない方が良かった。知らなければ良かった。
その思いは変わらない。いや、思わない人などいないと思う。
…でも、それでも会わせに行かせてくれたのは、俺のためだったんじゃないだろうか。
俺がそう思いたいだけかもしれないけれど
ここで、ただその事実を聞かされただけでは俺は納得しなかったと思うんだ。
例え、したとしてもまだ気掛かりは残っていたはず。
俺のせいで怪我をさせてしまった二人に対して罪悪感を抱いていた俺の気持ちに八代君は気付いていたのだろうか。
だから、せめて俺の目で確認できるように連れて行ってくれたのではないのだろうか。
出掛けに言っていた八代君の言葉。
『あれらは視えている者がいると気付けば寄ってくる。見るなとは言わん。じゃが、決してワシから離れるでないぞ』
離れるなとは、あれは今思えば右も左も分かっていない俺に警告してくれていたのではないだろうか。
普通に考えれば何も知らない素人を守ってまで、俺とあの二人を会わせてやる義理も道理もないはずなのに
それでも、八代君はそんな面倒な事をしてまで俺に良くしてくれたのだ。
「…きっと、何か理由があるんだよね?」
ポツリと零した独り言は夕焼けの空に消えていった。
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