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気が付けば、その華奢な身体を抱き締めていた。
小さな子をあやすように、その背中をぽんぽんと叩く。
「…何をしておる」
「あ、はは…ちょっと俺にもよく分かんない。…でも、こうした方が良いかなって思って」
「…どういう理屈じゃ」
「うん…何となく、だけどね。八代君が悲しそうに見えたから」
「…阿呆か。どこを見ておればそういう思考になる。お主の目は節穴か」
「阿呆の次は節穴?」
また新しく更新された単語に苦笑いするしかない。
「別に全然悲しくないって訳じゃないよ? 忘れられちゃうのは凄く悲しい」
「ならば何故…」
「…俺ね、両親が死んじゃってから本当に色んな人に助けられたんだ。辛い事もあったけど、その人達のお陰で頑張れたんだ。だから…皆がそれで傷付かないのなら、恩返しになるかなって思ったんだ」
「その恩返しとやらは報われるとは限らんのじゃぞ…」
「うん…分かってる。これは俺の自己満足みたいなものだから。きっと皆も普通に恩返ししたいって言っても、優しい良い人達だから『そんなの要らない』って言うと思うんだ」
「…………やはり阿呆じゃな」
「うん。俺も…そう思うよ」
強く掴まれた肩の感覚と温かい体温が、いつまでも残っていた。
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