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月の光が舞い込む室内を静かな夜風が吹き抜けていく。
そんな部屋の一角で、八代は壁に背を預けていた。
珍しく外出していない彼の視線の先には穏やかな寝息を立て、夢の世界にいる宗介。
「久住、宗介…か」
ポツリと呟かれた声で呼ぶのは眼前で猫と共に眠りこけている男の名。
「…やっと見つけたかと思えば、何故こうもお主は厄介事に巻き込まれたがるのか」
優しい手付きで宗介の頬を撫でる。
「今度こそ…今度は、俺が…」
言い掛けて、八代は口を噤んだ。
誰もいないはずの部屋の暗がりを見つめる。
薄紫色の瞳が鋭さを増す。宗介の隣で丸くなっていた猫も目を覚ましたようだ。
『*******』
そこからのそりと現れた、純白の猫。神々しささえ湛えるその猫は、およそ人の…いやこの世の言葉ではない言葉を発した。
人の耳には聞こえぬその声に、八代は黙って耳を傾ける。
「…分かった。時期を見て、そちらに向かう」
その言葉を受け、白猫は頷き、再び闇へと姿を消した。
過ぎ去った気配を感じてから、八代は大きく溜め息を吐いた。
心配そうに見つめる猫に大丈夫だと目で合図し、眼下の存在へと視線を移す。
「…呑気な寝顔だけは、今も昔も変わっておらんな」
鼻をつまむと息苦しさに顔をしかめる宗介を前に、八代はふっと笑みを零す。
そして、眠る宗介の唇にそっと口付けた――――。
【第二章 終】
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