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翌朝、俺は欠伸をしながら何故か山道を歩いていた。
「や、八代君?」
「何じゃ」
「関西に行くんだよね?」
「そうじゃが?」
「じゃあ、何で俺たちこんな山道を歩いてるの?」
てっきり新幹線とかに乗るものだとばかり思っていただけに、行けども行けども鬱蒼と生い茂っている森の景色に益々混乱する。
「ふむ…この辺りで良いじゃろう」
「へ?」
やっと歩を止めたかと思うと、八代君は山道から外れ茂みの中へと入っていった。
「ちょ、どこ行くの!?」
「いいから。黙って着いて来い」
そう言って更に歩みを進める八代君の後を慌てて着いていくと、
「…え?」
ぶわりと、何か壁のようなものを通り過ぎたような感覚に陥った。
「今のって…」
「無事、入れたようじゃな」
「入れたって?」
きょろきょろと周りを見回すと、まず最初に目に飛び込んできたのは…
「え、月?」
真っ白い、大きな月だった。
「え?あれ?え?」
ついさっきまで明るい朝だったはずなのに、いつの間にか夜になっている事に驚く事しかできない。
「ここは『狐道』と呼ばれる場所じゃ」
「きつねみち?」
「この世でもあの世でもない、中間に位置する、神々や妖怪たちが通る道じゃ。このような道は全国のどこにでも、主に山道などにあって津々浦々に繋がっておる」
「へぇ…」
そんな道があるのか。
「ここは人間が住まう所とは時の流れが違う。故にあちらでは昼だったものが逆転しておるのはよくある事よ」
「な、なるほど…」
八代君の説明に漸く理解が追い付く。という事は、
「この道を通って関西まで行くの?」
「そうじゃ。普通は人間がこの道に迷い込めばそう易々と出られんが…」
そこで言葉を区切ると、八代君はすっと俺に手を差し出した。
「?」
その行動の意味を理解できずにいると、
「何をしておる。早う手を出さんか。迷子になれば、流石のワシとて探すのには苦労する」
「最悪、一生ここから出られんぞ」と脅され、慌ててその手を掴んだ。
「よし、決して離すでないぞ。道中、不可思議なものを見かけても着いて行かん事。もしくは視るな。約束できるな?」
「う、うん。分かった」
駄目押しとばかりに念を押され、そう返すと、八代君は漸く狐道を進み始めた。
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