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「そ、そうだ!魂が視えるって言ってたけど、白炎さんとか八代君の魂はどんな風に視えてるの?」
何となくこの話題を続けたくなくて、話を変えるべく、俺はちょっと気になっていた事を聞いた。
『え…えっと、白炎さんってあの一番大柄な白髪の人だよね?』
「うん、そうだよ」
『あの人は、他の白髪の男の人たちと同じ青い色だけど、一番大きくて濃いね』
「へぇ」
そうなんだ。
「じゃあ、八代君は?」
『八代さんは………紫?なんだけど…』
「だけど?」
相田さんは暫くじっと目を細めて八代君を見ると、漸く口を開いた。
『赤と青が混じってる?』
怪訝そうにそう言った相田さんに、俺は首を傾げた。そんなに不思議そうに言うような事だろうか?だって、紫は赤と青で作る色だ。だから当たり前じゃないだろうか?
そんな俺の疑問を感じ取ったのか、相田さんは付け加えるように続けた。
『幽霊になってから僕が視た魂は、全部一色だったんだ。だから、八代さんみたいに完全に混ざってないみたいな色は初めて視た』
「え、それって――」
どういう事なのだと言おうとしたその時、一際大きな奇声が上がった。
驚いて見ると、九重の式神が地面に倒れて、ザラザラと砂のように崩れていく様が見えた。
『倒したみたいだね』
相田さんが視線を空へと向ける。
倣うように見れば、真っ赤に染まっていた月はもうすっかり見慣れた普通の月へと戻っていた。
それはつまり、九重の結界が解けたという事を表している。
「良かった…」
思わず、ほっと胸を撫で下ろす。
「宗介」
「あ、八代君!大丈夫?怪我はない?」
程なくして、戻ってきた八代君は俺の質問に「大事ない」と簡潔に答えると、俺たちの周囲に張っていた結界を解いた。
「さて、相田よ。恐らく、そろそろ迎えの者が来るじゃろう」
『分かってる。大人しくあの世に行くから心配しなくていいよ』
そう笑顔で言った相田さんの身体の輪郭がほろほろと少しずつ崩れていく。多分、相田さんの姿を形作っていた魂たちが離散していっているのだろう。
「…そうか。ならば――」
八代君が何かを言いかけた、その時だった。
『…うっ』
相田さんが急に胸を押さえて苦しみ始めたのは。
「相田さん?相田さん!」
『うっ、ぐう、くる、し…っ』
「や、八代君!」
何が起こっているのか分からず、助けを求めるように八代君を見る。
「…そやつから離れよ、宗介」
「え?」
けれど、返ってきたのは冷たい声だった。
「ど、どういう事?」
「…そやつは今、悪霊になりかけておる」
…え?
「な、何で…」
「宗介」
「いやだ、いやだよ!何とかならないの?!」
「…*****」
八代君が何かを発したと思った瞬間、俺の身体は浮かび上がった。
「ちょ、八代君!?」
ふわふわと浮かぶ薄紫色の球体の中で、壁をどんどんと叩いて出してくれと叫ぶ。
でも、八代君はそんな俺の声など聞こえていないかのようにこちらを見ない。
『いやだっ、悪霊になんか成りたくない!助けて、助けてよ!』
「!!」
相田さんの姿を見て、俺は咄嗟に口を手で押さえた。そうしなければ、悲鳴を上げてしまいそうだった。
白かった姿は黒く変わり果て、優しかった眼は血のように赤く染まり、その胸から生えた赤い蔦(つた)のようなものが相田さんの身体に巻き付いている。
その変わり果てた姿に、言葉を失う。
「おい、こりゃあ一体どういう事だ?」
薙刀を肩に担いだ白炎さんが八代君の隣に立ち、問いかける。
「…恐らく、九重の仕業じゃろうな」
「はあ?式神はさっき始末しただろ。何で――」
『それはね、この人の中に種を植え付けておいたからだよ』
「!!」
その場にいる全員に戦慄が走る。
何故なら、その声は目の前にいる相田さんから―――否、相田さんの姿をしたものから発せられたのだから。
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