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第五章 ① ※
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「ちょっと、リグ。いきなり引っ張らないでください」
窓辺から、帰って行ったシアンを見送ろうとしたものの、唐突に窓を閉めたリグに後ろから引っ張られ、大きく窓から離れてしまう。
「お前、昔からシアンには懐いてたよな」
不機嫌なまま、カーテンまで閉め切ってしまうと、リグはポツリと呟くように言う。
「は?」
ザークは意味がわからないと小首を傾げてリグを見る。
「うん。わかってないことはわかってる。あ?うん。ザークがわかってないことを俺はわかってる。よし、間違ってない……」
ボソボソと呟くリグに、ザークは更にハテナを浮かべるのだが。
とりあえず、自分が何をしていたか反芻してみる。
リグとしゃべっていたら、窓からシアンが来訪した。だからシアンを招き入れ、アイリスについて聞いた。アイリスのことをシアンにお願いした。シアンが帰ろうとしたので見送ろうとした……。
何がいけなかったのだろううか?
特に何かをしてしまった記憶がない。
「リグ?」
そうなれば、リグに話しを聞くしかなくて、相手を呼べば未だに不機嫌そうにブツブツと呟いている。
「えーっと、リグ?」
リグのすぐ傍までそっと移動し、服の裾を引っ張ることで注意を引く。
「あぁ、とワリ、ザークどうした?」
どこかへ意識を飛ばしていたかのようにハッとしてザークを見るリグ。
「いえ、ずっと不機嫌そうでしたから。私が何かしてしまったのかと考えたのですがわからなくて……」
二人で話していた時は、不機嫌そうなそぶりなどなかった。
シアンが来て、アイリスの話しをした時からずっと不機嫌なのだ。
シアンが、来て……?
「えと、シアンを招き入れたことに怒っているんですか?」
大きく外れているわけではない、ないのだが、根本が違う。
別にシアンが来ることはどうでも良いのだ。何かとザークをかまうから、とりあえず自分のいない時には来るな、とは思うが。というか、シアンの来訪を未然に防ぐなんて芸当、俺にはできないし、後からの報復が恐いからやろうとも思わないのだが。
「いや、そこじゃない。そうじゃなくて、だな……」
だいたい、シアンを招き入れなければ、アイリスの不可解な行動もわからないままだったのだ。
だから、そこは良い。今回はきちんとした内容の話しを持ってきたのだから、それは良いのだ。
逡巡するのは、自分の独占欲の為に動き、ザークを不安にさせてしまった負い目から。
「リグ、話してくれないとわからないんです……」
小さな子どものように、ザークは言葉を紡ぐ。まるで昔、あの頃に戻ったかのような錯覚。
「っっおま、え。わざとか?」
手で顔を覆って俯いてしまうリグに、更に訳がわからなくなるザーク。
「え、リグ?」
と思ったら、突然手を引かれ、リビングを後にすることになる。
「は、え?」
気付けば、ベッドの上で。
瞳を彷徨わせているザークに、リグはニヤリと笑う。
「昨日はソファでそのまましちまったからな」
そう囁いて、ザークを押し倒す。
行動が、言動がさっきから意味不明で、ザークは全くわからないままに組み敷かれてしまう。
「いや、あの、ちょっっと、リグ!」
「今更慌てても遅い」
サラリと言い、軽いキスから仕掛けていく。
昨日のように抵抗を見せないのは、昼間の会話が有ったからか。
「リグ……本当に、わからない……」
キスの合間に漏れるザークの吐息と言葉。
「わかんなくて良いよ。俺の我が儘だと思ってろ」
答えははぐらかして。
触れるだけのキスから深いモノへ。
「んっ……」
言葉など紡がせないとでも言うように、深く深く。
シアンが撫でた頭をさらりと撫で、まるで上書きをするように。
「ん、あぁ……」
直接肌に触れれば、フルリと震えて甘い声が唇からもれる。
いつの間にかザークの服は脱がされていた。
「リグ、ん、やだ……」
何かを嫌だ、と口にするザークに、リグは「ん?」と優しく問いかける。
「はっ、リグの服、じゃま……」
息を乱しながら、ザークは自分の要望をリグに聞き入れてもらおうと、口を開く。
リグの首にすがりつくザークの手は、リグの服の襟元を握っている。邪魔なのだと、主張するかのように。
「っっ」
声にならず、息を止めざるおえなくなるリグ。覆いかぶさる体勢から、パッと起き上がり、口元を隠している。
「?リグ……?」
いつの間にか指の動きも何もかもを止めたリグに、ザークはまたハテナを浮かべることになる。
「お前、何だ、その可愛さは」
昨日、嫌だ嫌だと抵抗していたのは、どこのどいつだと聞いてやりたい。
「普段から、素直になれ、素直になれって言うのはリグじゃないですか」
訳がわからないままに組み敷かれ、今の状況にもってきたのはリグだというのに、また訳のわからないことを言われてしまう事に、少しスネたようなザークの口調。
「うん。それで、素直に思ったままを口にした、と。俺の服邪魔なんだよな」
言いながら、着ていた上をバサリ、と脱ぎ捨てる。
「何?今までもそう思ってた?」
少し自分を取り戻してきたリグは、ザークに再び覆いかぶさりながら問う。
素肌どおしで触れ合えば、相手の熱が余計に伝わる。
ザークはまた、リグの首へと腕を回して、密着したいというように。
「わかんないです。今までの事なんか、知らない」
腕は素直に回してくるのにも関わらず、フイとそっぽを向くザークはリグにからかわれたのだと、少し不機嫌だ。
「クク。本当可愛いな。他には?」
優しく抱き返し、ザークの要望を聞くべく、耳元へと囁く。
「っっ」
今度はザークが息を止める番だった。
そっぽを向いていたから、リグにはザークの耳がすぐ近くにあるのだ。耳まで赤く染まるザークにリグは、
「ほら、ないの?」
耳元で囁くことを止めない。
「意地悪だ……」
呟かれたザークの言葉は最後の抵抗なのか。
「ごめん、ザーク。こっち向いて」
背中に回した手で、すっとザークの背をなでる。
まるで宥めているかのような、そして、ゆるい愛撫のようなそれに、ザークはフルリと身体を震わせる。
「ザーク、キスしたいから、こっち向いて」
静かにそっと、優しい声で。
赤く染まった顔を隠すことができないことに、リグの方を見ることをためらっているのか、ザークは動かない。
リグの首に巻きつけた腕のどちらかを離せば、顔を隠すこともできるのだろうに。離れてしまわないようにと、密着させたザークの身体は熱を失ってはいない。
「ザーク」
名前を呼んで促せば、ゆうるりとザークの頭が動く。
「意地悪、しないで……」
幼子のような頼りない声。
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