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アジスタとシアンとリグアザード アジスタの思考
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「おい、リグ。アジスタが何か考え込んでるけど、お前何かした?」
シアンの声が、一番下の弟にかかる。
「はぁ?俺は何もしてねぇよ。あんたこそなんかしたんじゃねぇの?」
対する弟リグアザードは、シアンに噛みつく勢いで返す。
「俺のことはお兄様と呼べ。というか、だいたい怒られるようなこと、リグしかしないじゃないか。俺が何かするわけないだろ」
飄々と返すシアンに、リグの眉間にしわが寄る。
「あぁ?いっつも俺に責任転嫁してんのは、あんたじゃないか。俺は何にもしてねぇのに、俺のせいにされたこと、何度もあったよな?」
シアンの前半の言葉は綺麗にスルーだ。
それに対して、シアンのニッコリ顔の後ろに暗黒物質が湧き上がる。
「お兄様に対してなんていう言い様。俺がいつ、どんなことでお前に責任転嫁したかな?ほら、言ってごらん。いつ、どんなことだったのか。さぁ」
そう言いながら、シアンはリグににじり寄る。
リグは少したじろいだ。だいたいが責任転嫁されても、結局それがどんな何だったのかを忘れてしまうリグだ。というか、それを知らないままに、責任を押し付けられることがほとんどだ。答えようがない。
「ほら、答えられないじゃないか。で、今回は何したの?今のうちに謝っちゃいなよ。今ならまだ、小さなお小言だけで終わるかもしれないよ?ほら、考えてごらん。自分がアジスタに何したか。わからないかな?リグってば、すぐに自分のしたことも忘れちゃうからね。困った弟だよ。じゃあ、ここ数日を順を追って思い出してみよう。ほら、早く」
アジスタの考え事が、すでにリグのせいにされている。
だが、たしかにあの長兄が怒り狂ったら、それはそれで恐ろしい。
シアンの弾丸トークなど、どうでも良いが、思いもしないことでアジスタに怒られるのだけは、避けたいリグだ。
というか、シアンも自分がアジスタの怒りの矛先にならないように、リグに責任転嫁してくるのだ。
「待て、本当に俺は何もしてないぞ」
ここの所、アジスタが出かけていることが多かった。
顔を合せるのも、数日ぶりだ。なのに、何故こんな理不尽な言いがかりをされねばならないのか。
「俺だって何もしてないから、リグしかいないじゃないか」
今回、シアンは本当に何もしていない。
何かしていたなら、それをさっさとリグのせいにして、トンズラするような男である。
アジスタが、考え込んでいる理由がわからない。
わからないとなれば、余計に恐ろしい長兄だ。
「やかましい」
ふいに二人の兄弟げんかに、長兄の声がかかる。
ビクッとしたシアンとリグ。
「ご、ごめん。考え事の邪魔になるみたいだから、俺たち別のとこ行くね」
シアンが慌ててアジスタに声をかけ、リグをつついてリビングを後にする。
「ほら、なんかアジスタ怒ってるって。本当何したの、リグ」
「だから、俺じゃねぇって」
遠ざかって行く弟たちの声を聞きながら、アジスタは元気が良いななどと、のんきなことを考えていた。
そもそも、アジスタの考え事は、別に二人が何かをしたとかそんなことでもない。怒ってもいない。
というか、ここは共有スペースなのだから、別に出て行かなくても良いのではないか、とすら思っている。
やかましいと言ったのは、アジスタにとっては、もう少し静かに会話をしてくれ、という意味だったのだから。
どうもアジスタは、弟たちにさえ自分が勘違いされていることに、気付いていない。
アジスタは、ここ数日前に出逢った少女のことを考えていた。
可愛らしい外見に似合わず、どこか人間の恐ろしい狂気を凝縮したような思考を持っている少女。
彼女の弟も、可愛らしかったが、アレは光の存在で、自分とは相容れないモノだ。と見た瞬間にわかった。
相容れない存在よりも、アジスタが考えるのは、少女のこと。
可愛らしい外見は、実は大変アジスタの好みだったのだ。
アジスタの外見は、背の高い大人の男だ。その上無口で無表情。
だが内情は、可愛いものが大好きという、その外見には似合わない嗜好をしていた。
実を言えば、弟たちも、可愛いと思っている。
だから、めったなことでは怒った記憶もない。のだが、なぜかシアンもリグも、アジスタの機嫌を伺っている時が多い。
その辺については、アジスタ本人が気付いていないので、どうしようもない。
弟二人と、最近知り合った可愛い少女。
可愛い物を愛でて、何が悪い。とアジスタは考える。
さっきシアンとリグの言葉の掛け合いを、やかましいと終わらせてしまったが。実際のところは、二人のけんかを微笑ましく見ていたのだ。
ただ、声が大きくなってきたから、注意をしただけで。
内容をしっかりと聞いていたなら、自分が誤解されていると気付きそうなものだが。アジスタはそこに気付かない。
さて、出て行ってしまった弟たちは、しかたがない。どうせ同じ家に住んでいるのだし、いつでも会える。
ならば、また、少女に会いに行こうか。
あの少女は、今度は何を言って、自分を楽しませてくれるのだろうか。
少女の狂気に満ちた思考も、アジスタには可愛らしいと思わせるものでしかなかった。
しばらく、少女の為に動いても良いと思うほどには、アジスタは少女を気に入っていた。
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