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アイリスとアイリザーク ある日の二人
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「ザーク、ほら、ご飯」
姉が、スープとパンを持って来てくれた。
母は、僕のことを忘れたみたいに放っていたから、僕は姉がいて助かっている。
「姉さん、ありがとう」
僕が、姉のことを名前で呼ぶと、母はとっても起こるんだ。
だから、僕は姉さんって呼ぶ。
「父さんが亡くなったの。だから、今日のお出かけは無しよ」
え、と姉を見た。
お父さんは、僕を連れて今日出かけるって言っていた。
どこに行くとか、わからなかたけど。多分知らない所に置き去りにされて、僕は捨てられるって、わかっていた。
お父さんとお母さんが、話しをしているのを聞いた、って教えてもらっていたから。
誰に?
誰にも言えない内緒の僕の友達に。
だって、誰も見えないから、だから内緒なんだ。
でも、時々その内緒の友達と話しをしているのを、お母さんとお父さんに見られて。僕は家族から離れて暮らしていた。
不自由なことは、一杯あった。僕はまだ小さいから、まずご飯の作り方がわからない。
わかっていたとしても、小さい身長じゃ、ここのお家から離れた場所のキッチンには手が届かないんだけど。
姉が、こうやってご飯持って来てくれないと、きっと僕は死んじゃうんだ。
「お父さん、どうして……」
仕事しないで、家でお酒飲んでいるって、知っていた。
でも、お父さんが亡くなったっていうのは、死んじゃったってことだよね?
「さぁ、よくわからないわ」
姉はそう言って、首を傾げていた。
あぁ、わからないことを聞いてしまった。姉にも嫌われてしまったら、どうしよう。
「ごめんなさい」
「どうしてザークが謝るの?何も悪いこと、してないでしょ。あ、母さんが呼んでる、行かなきゃ。また来るわ」
謝った僕に、姉はそう言って、綺麗に笑った。
お家から、お母さんの声がして、姉は僕の元から去って行った。
お父さんが亡くなっても、姉はあんな風に笑うんだな、って思った。
僕も、あんまりお父さんと一緒にいたりしなかったから、悲しいとか、よくわからないけれど。
でも、姉はお父さんと過ごしていたのに、って思うと変な気分。
よく、わからないや。
持って来てもらったご飯を食べながら、お母さんは僕をどうするんだろう、って考えていた。
※
ザークはまだ小さいんだから、私がいてあげなきゃいけない。
服はなんとか母親に、ザークの物も買わせてたわ。だって、毎回同じ服、着てたら近所の人に、変に思われるわ。って言えば、なんとかなった。
ご飯は、台所から、勝手に持って行ったわ。持って行ってあげなきゃ、あの子は食べるものがなく、死んでしまうもの。それは嫌よ。
住んでる所は、敷地内の離れ。まだ小さいのに、一人でそんな所にいて、きっと寂しいって思ってる。だから、毎日数回、顔を出すの。
今日もさっき、ザークにご飯を持って行ってあげてた。
もう少し話しをしたかったのに、母さんが呼ぶから、仕方なく離れたわ。
だって、母さんは私がザークと一緒にいると、ザークを怒るのだもの。あの子は悪くないのに。
私があの子に会いにいっているのに。
ザークは、私のことを「姉さん」って呼ぶ。母さんが、あの子が私のことを、名前で呼ぶのを怒ったからだけど。
律儀に守らなくて良いのに。でも他には、こんな風に呼ばれたりする人はいないだろうから、私だけの特別な呼称。だから、それはそれで気に入ってはいるの。
父さんが死んじゃった事伝えたら、びっくりしていたわ。
あら、それは知らなかったのね。って思ったけど。そんなことよりも、あの子が連れて行かれなくなって良かったと思っていたから。どうでも良いわ。
母さんを、早く説得しなきゃ。
簡単なことよ。
近所の人たちは、ザークのことを知っているもの。
姿を見なくなったら、おかしく思うでしょ?
離れで死んでるの発見されたら、きっとこの家も無くなっちゃうのよ。
下流の貴族、なんですって。よく知らないけれど。お金があるのはその為みたい。
それで、不自由なく暮らせる分には、問題ないわ。
でも、その貴族が、幼い子どもを殺してたら、きっと良くないってくらい、私にだってわかるのよ。
幼い子を、どこかに捨てに行ったのも、バレたらきっと良くないの。
だから、そこを頑張って母さんに言えば、どうにかあの子を離れだろうと、生きていさせてあげられるのよ。
父さんは、聞いてはくれなかったけど。母さんは私には甘いのよ。だから大丈夫。
それに、アジスタが言っていたじゃない。あの子は光なんだって。
光っていうのは、良いことでしょ?だから、守ってあげるの。
光っていうことの、本当のことはわからないけど。でも、光って、暖かくて、傍にいてとても安心するものだもの。
だから、あの子に会いに行くと、安心するのね。
アジスタは、あれからも時々やってきては、私のことをみているだけ。
無口だし、無表情だし、何を考えてるのか、本当によくわからないんだけど。
それでも、今は私を殺そうとか、契約をさせようとかしないから、だから少ない会話でも、なんとかなっているわ。
時々無意味だってわかってるけど、イライラするけど。わからないことに。
だから、あんまり考えないように、アジスタには接してる。
アジスタは、本当に何がしたいのかしら?
なんでも良いわ。あの子のことを教えてくれたのはアジスタで、私はあの子を大切にしたら良いのよ。
それだけよ。
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