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騒動だらけ 生徒会 ①
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『生徒会は機能しているか』
投書箱に入っていた紙。
忍は少し考える。
「機能して無かったら、行事も何も出来ないと思うが」
この紙に回答しても、無意味だろう。
生徒会長である忍しか、この部屋にはいない。生徒会執行部の部屋だが、副会長や会計、書記や庶務それから補佐なんかも来ることは少ない。会議しなければならない時には来てるが。
この前の七不思議の紙といい、不穏な物にしか見えない。
あの七不思議の紙も、投書箱に入れられていた物を、誰かが出して机に置いたのだろう。
誰か……この生徒会室の鍵を持っているのは、自分と副会長。それから顧問くらいか。だとしたら、副会長は意外とここへ来ているのか。
前期にというか、自分の関わらなければならない行事を考えてみる。
夏休み前は、球技大会。夏休み後に体育祭。文化祭は後期の選抜された生徒会役員と、引き継ぎも兼ねて一緒に行う。
今は球技大会に向けて、予算やらタイムテーブルやらを考えている所だ。
前年度の書類は残っているので、反省点等を踏まえて、今期の球技大会について考えている。
「だがまぁ、たしかに球技大会までは目立った行事も無いから、機能しているかどうかはわからないか」
球技大会は五月だ。それまではほぼ何もない。
後期の役員から引き継いだ後、忍が執行部として表舞台に立ったのは、卒業式と入学式くらいだろう。
その後に度々全校集会などは行われていたりもしたが。それらは教師陣が仕切っている。
「何を生徒会に求めているのか、書いてくれないことには、動きようが無いな」
考えてみれば、前期の役員の方が動かなければならない行事が多い。
後期役員は、前期役員と一緒に文化祭を成功させた後は、ほぼ行事が無いのだ。なので、後期からそのまま年度が替わっても前期役員となっている場合が多い。
忍は異例だったのだ。
そのまま、後期役員が前期役員のままであるなら、今の生徒会長は今副会長をしている彼だった。
彼を押しのけたのは、忍の力の強さ故だった。
力の強さで決まる役員。忍はずっと見向きもされない程度の力しか無かったのだ。
去年末、実家に帰省した頃に、忍の力が開花した。その為に、彼は押しのけられ、忍が生徒会長になった。
「私が嫌で生徒会室に来ないのだろうと思っていたが」
そんな形で生徒会長になったから、他の役員特に副会長が、自分を嫌っているのだろうと推測していた。だから彼らが来なくても、忍は何も言わなかったのだ。
「わざわざ、当てつけずとも良いだろうに」
自分の信頼を失墜させたいのだろうか。ただ単に、嫌がらせをしたいのだろうか。
リコールをしたいと言うなら、してくれて構わない。わざわざストレスになるように仕向ける必要性は、どこに有るのか。
「そのような意見など、無視しておけば良いだろう」
そう言ったのは、忍に付いて来ていた柳。
彼はどこに行くにも、忍に付いて来るようになっている。彼は守龍としての責務から離れ、とても自由になっていると思う。
神は本来慈悲深いが、とても残酷でもある。自分が庇護した対象以外は、切って捨てる。
「無視、か。そうだな。やらなければならないことの方がが多い」
彼に言われ、忍はその紙を放置した。
球技大会へ向けての書類は、ほぼ出来ていた。出来たら役員の意見を聞きたいところなのだが。
書類を取り出して、忍は眉をしかめる。
「これは……副会長の文字か?」
付箋で印が付けてあり、改善点が書かれていた。
「面妖なことだな。ここに忍が居る時は現れず、別の時に現れているのか」
忍自身は付箋を貼っていない。文字も忍よりは少し崩れた文字。
傍らの柳も、おかしなことをと呟く。
「まぁ、改善点はわかりやすい。彼なら去年度の文化祭を、役員として行っている。だからこその意見だな」
副会長は鍵を持っているのだ。書類の有る場所もわかっているだろう。
忍は昼休みにはここに来ない。それを知っていて、彼が昼休みに現れているのなら、何も言えない。
「真意を聞くべきでは?」
昼休みにここに来れば、彼に会えるかもしれない。が、
「知られたくないと思って、私の居ない時にわざわざ来てるなら、何も言わないだろうな」
同じ霊能力者クラスだ。だが、教室で話そうと思えば、別の役員の目に止まる。
聞こうと思えば、やはり昼休みに生徒会室に来るべきだろうか。
それとも、他の役員も昼休みには来ているのだろうか。
「一人で考えていても、仕方ないな。動かなければわからないままだ」
改善点を見ながら、書類を新しく作り直していく。
※
まったく、嫌になる。
どうして僕がこんなにも、他人のことを考えて動かなきゃなんない訳?
僕は僕が動きたいように動ければ、それで良いのに。
生徒会長だって、面倒でしかなかった。
だから副会長になったことを、僕は喜んでたのに。
誰かの上に立つような人間じゃない。誰かに指示してもらって、やっと動ける人間だ。
だってそうでしょ?
その方が、断然良い。楽ができる。
責任は僕がおうんじゃなくて。上に立った人間がおう。だから、それで良かったのに。
書記や会計、庶務とか補佐に、僕の方が適任者なんて言われて、僕が喜ぶとでも思ってるんだろうか。むしろ、適任者は桐生だ。
僕たちが動こうとしないのに、彼女は一人で役員の仕事をしてる。
責任感も強いし、どうして他の役員が生徒会室に行かないか、多分きっとわかってる。
それなのに、文句を言ってこない。
会計とかだと、桐生に何か言われたら、きっと逆ギレしたりするんだ。面倒な奴。
僕はアイツらの方が嫌い。何かに付けて、全部の責任を僕に押し付けて。前から仕事なんて、しっかりやってない奴らだったし。
だからアイツらが、仕事ボイコットしようとか言い出した時、それ今までと変わらないって言いかけたけど。だからって何で僕がこんな風にアイツらに気付かれないように生徒会室に来て、少しだけ仕事して……馬鹿みたい。
桐生は気付いてるみたいだけど。そりゃそうか。やらなきゃいけないと思ってた書類が終わってたり、訂正カ所書いた付箋が張ってあったり。バレてるってわかるけど。でも、クラスじゃ話しかけないで欲しいから、僕は徹底的に無視してる。
だって、面倒じゃないか。仕事ボイコットって言い出したアイツらに気付かれたら。
隠れて僕が仕事してるって気付かれたら。何言ってくるかわかんないし。逆ギレされたら、それこそ面倒だし。
今までアイツらは、たいして仕事をして来なかったから、生徒会役員の仕事が結構たくさんあること、知らない。桐生一人じゃ、絶対無理だってわかってる僕が、動くしかないじゃないか。面倒だけど。
本来面倒なこと大っ嫌いだけど。でも役員になっちゃったんだから、最低限のことはする。
仕事してないなら、役員止めたらいいのに。したくないなら桐生に言って、別の人員にした方が良い。でも多分、桐生はそんなこと、考えもしてないかな。生徒会長権限で、役員入れ替え出来るって、知ってるかも怪しい。
桐生は行事をしたことが無いんだよね。だから、僕らがフォローしなきゃなんないのに。
球技大会の資料、しっかり作ってあった。前年度のを改良したんだろうけれど。それでも更に改良した方が良い場所は有って。きっと僕らに意見聞きたいって思ってるだろうな。付箋は張って来たけど。足りてるかな。困ってないかな。
そう思うなら、放課後に生徒会室に行けば良いんだろうけど。でもそれをアイツらに見付かったら、面倒でしかないんだよね。
昼休みに生徒会室に向かうのも周り遮断したりして、って気を使ってやってる。放課後なんて、何でかアイツらのうちの誰かが僕の所にわざわざ来たりするし。同じクラスの書記なんかにはしょっちゅう絡まれてる。昼に抜け出すのも一苦労。
僕何でこんなこと、してるんだろう。
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