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高校だし 球技大会 ②
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さて、今日は球技大会の日だ。
生徒全員体操服で、グラウンドに集まっている。
開会式して、それぞれの場所に移動するからなんだけど。
バスケとバレーは体育館だからね。一度外に出て、それから体育館に行くんだ。
講堂に集まると、またなんやかんや起きそうだから、開放感の有る屋外は良いと思う。暑いけど。
まぁ、この暑い中で運動する訳だし。それは仕方ないか。
水分補給はしっかりするように、とか色々注意事項が有って。
「では、第一試合はこの後十五分後に始めます」
と桐生会長からの合図で、生徒は散った。
第一試合のある生徒は急いで。それ以外は案外のんびりと。
事前にトーナメントはクラス委員が発表してくれてたので、俺はのんびりの方だ。
しかもサッカーは人数が必要で、交代要員も多数揃っているので、俺は出番が無いのではないかと思っている。
「藤」
凛とした声に呼ばれて振り返る。
そこに居たのは、桐生会長だった。
「恭の同室者の藤圭吾、間違いないか?」
あの魔物騒動の時に、近くに居たには居たけど。俺は桐生会長と話してもいないし、きっと会長は恭とその魔物との会話が主で、俺のことなんて覚えていないだろうと思ってた。
問われて頷きながら、何か用が有るのだろうか、と考えてみる。
恭のことが気になってて、俺にも話しが聞きたいとかなんだろうか。恭は自分のこと、あんまり話そうとしなさそうだし。
「言っておくが、恭のことは関係無い。今お前が必要だと感じたから、声をかけた」
端的過ぎて、桐生会長は何を考えているのかわからない。
表情も無表情だし。
そんなところは、恭と同じだ。一緒に過ごしてるから、恭のことはわかるようになったけど。
二年年上のこの人のことは、よくわからない。
「ええー、と」
俺が必要だと言われても、何に必要なのかさっぱりだ。
「生徒会がリコール間近だとは、知っているか?」
問われて頷く。それは恭に聞いてるから、知ってる。
「今日も役員は動かないだろう。一年の取りまとめに、藤の力を貸して欲しい」
「へ?」
びっくりして、変な声が出た。
俺は風紀でも保健でもでも無いので、こういう行事にはただの参加者だ。
「三年は私が取りまとめる。二年は八木崎という副会長だ。そこで問題なのが一年のまとめ役だ。本来なら、役員の誰かを当てるのだがな」
風紀や保健はそれぞれの任務が有るんだろう。
そう話してるクラスの奴は居た。クラス委員も、実行委員となってるから、人手にはならないのか。
となると、ただの参加者の中から、選ぶしかなくなるのもわかる。
「本来なら生徒会が動かなければならないのだが、申し訳ないが引き受けてくれないか?風紀や保健、実行委員からの報告をまとめて本部に持って来てくれるだけで良い」
俺はかなり戸惑って、桐生会長を見つめる。
「本来なら、もっと早くに打診すべきだった。だがなかなか決まらなくてな。開会式後になってしまったのは本当に申し訳ない。しかし、一年の風紀と保健と実行委員の六名全員が藤の名を上げた。同年の取りまとめ役ならば、一年も緊張せずに報告できるだろう。藤は私たちへの報告が義務になってしまうが」
本当に困っているのだろう。申し訳なさそうに、頭を下げられた上に、さらに説明される。
報告を受けて、人員を割いたりするのは、きっと桐生会長がしなきゃならないことなんだろう。
三年を取りまとめるって言ってたけど、それがさらに会長の仕事を増やしてると思う。
本来の生徒会役員が動いていれば、学年のまとめ役は彼らがやったはずだ。それが生徒会長と副会長自らが動かなきゃならない上に、全学年のまとめまでしなきゃならない。
俺にはノーとは言えない。
恭が桐生会長を心配してたのも、聞いてるし。
「俺で良いなら、引き受けます」
どんだけ力になれるかわからないけど。
この人が力を貸して欲しいと言うなら、俺は全力で答えたいとも思った。
「助かる。一度本部に集まることになっている。そこで八木崎たちにも紹介しよう」
心底ホッとしたという感じの桐生会長を見ていたら、余計に頑張らなきゃなという気持ちが湧いた。
促されて、本部へと歩きながら、クラスの委員たちは知ってるけど、隣のクラスの奴らは知らないのにな。と疑問を持つ。
まぁ、入学式で壇上に上がってるし、俺のことを相手が知ってても、不思議じゃないのか。
「お、圭吾や」
知った声に、本部の中を除く。
「良二?」
「何を隠そう、俺はヒーラーの力が有るから、保健委員や。ほんで、会長に一年の取りまとめ役の話し言われた時に、お前のクラスの奴らがお前の名前上げてん。で、俺も圭吾やったらええな、思って圭吾言うたら、俺のクラスの奴らもそう言ったんや。会長が話ししてくる言うたから、引き受けてくれるやろ思てたけどな」
本当に良かったと、良二は言う。
「僕も~、圭吾君だったら~、引き受けてくれるだろうな~と思って」
「あ、陸也。そういえばクラス委員押し付けられて、クラス委員だったな」
委員会決めの時に、クラス委員になり手がいなくて、のんびりしていた陸也が押し付けられていた。
「ひどい~です~。忘れてたんですか~?」
そういえば、このまったりペースで球技大会について説明を受けていた。と今更思い返す。
「君が藤圭吾?」
さっきの開会式で、前に立っていた上級生に声をかけられる。
「はい、そうです」
「ふーん。僕は副会長の八木崎亨。今日は面倒だろうけど、よろしく」
本部には他にも風紀の委員長とか保健の委員長とか居たけれど。とりあえず、生徒会長と副会長を知っていれば良いとも言われた。
直接関わるのは二人だから、他は問題ないそうだ。ただ、本部にこの二人が居なかった場合は、風紀の方に顔を出して欲しいとだけ言われた。
問題が何か起こったら、その場に居る風紀委員や巡回の風紀委員が対応する。俺はその際に本部へ連絡、そういうことらしい。
学年が関係なくトーナメントを組まれているから、一年が関わっていた場合の連絡係である。
風紀委員の巡回は居るけれど、問題が起こった時に動ける人間が居ないと、やっぱり大変なんだとか。
「藤は試合中以外は、一年が試合している場所を見回っていて欲しい」
そう言った桐生会長に、タイムテーブルとトーナメント表を渡された。
勝ち抜けたクラスの結果は、放送委員が時間になったら放送をするので、書きとめて行くようにと言われる。
「ほい、圭吾。ペン」
良二が用意したのだろうペンを渡される。
参加だけな俺だったから、筆記用具など持ち合わせていない。
「借りるな。ありがとう」
ありがたく受け取ったら、バインダーを八木崎副会長から渡された。
有った方が便利なので、それもお礼を言って受け取った。
「藤はサッカーに参加だと聞いていたが、間違いないか?」
桐生会長に確認される。陸也が話したのだろう。
「間違いないです」
「わかった。試合中は試合に集中してもらって大丈夫だ。いきなり頼んで悪いな。だが助かる。よろしく頼む」
再度会長に頭を下げられてしまった。
「いやいや、そんな。俺で出来ることがあるなら、頑張ります」
出来ることが有って、手伝いをして欲しいと請われたら、俺は全力でやりたいと思う。
出来ないことで頼まれた訳ではないのだから。
「風紀はトランシーバーを持ち歩いている。何か有ったら、風紀に声をかけろ。その際は上級生だとかは関係ないからな」
風紀の委員長なのだろう。不測の事態に陥ったら、風紀に声をかけたら良いのだと教えてくれる。
「はい。わかりました」
ちょっとびっくりな仕事が突然入ったけど、球技大会を俺は楽しもうと思う。
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