アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
夏休みがやってきた 修了式とそれから
-
講堂に集まった生徒たちは、浮足立っていた。
この修了式が終われば、夏休みなのだ。
一部沈んだ表情をしているのは、補習になった生徒だろうか。
講堂に全生徒が集まれば、暑いかと思っていたのだが。エアコン設備が有るのか、快適である。
厳粛とは言えないが、それなりに静かに生徒は壇上の校長の話を聞いているだけである。
校長の話も、ハメを外し過ぎず、夏休みを事故無く過ごすように。といった簡単な感じの話をしているだけだ。
長すぎてダラダラと話し続けることも無かった。
見知った顔が壇上に上がったなぁと思ったら、風紀委員長だった。
あの球技大会の時はそこそこ話をした相手だが、それ以降は全く接点なかったな、と圭吾は思う。
「風紀委員から、夏休み帰省せずに寮に残る生徒へ注意事項を。主だった注意は、長期休み期間以外とは変わらない……」
要は、夏休みだからって気を抜いて遊びすぎるなっていう注意だった。
外出届を出して外に遊びに行くのは良いけど、門限に間に合わなかった場合は本当に締め出されることになるから、きっちり時間内に帰ってくることとか。
寮監さんも長期休みで帰ったりするから、まだ帰って来てない学生がいるかどうかの確認を、いちいち風紀はしないらしい。鍵を任された風紀委員は、時間どおりに鍵を閉めてしまうことが仕事だからだろう。
で、帰って来て無かったら、無断外泊で反省文。これは辛い。
ちょっと後で、外泊届を出したけど、台風とかの悪天候で船が止まって帰って来れなかった時の対処方法を先生に聞きに行こう。
場合によっては日程がズレるっていうことは、すでに記入済みだったけど。それでもやっぱりこの長期休暇は、外泊やら外出届は大量に出てそうだし。
その中で、俺の外泊届が流されて処理されていても、何の文句も言えないのだが。だからと言って、届に出した日程で確実に戻れる保証がどこにもないのだ。
離島に実家が有るって、不便だと改めて感じる。
次に壇上に上がったのは、生徒会の面々だった。桐生会長と八木崎副会長以外は知らない顔だ。いや、前の生徒会の面々も知らないけど。
「役員が変わったということは、皆知っていると思う。だが、顔までは下級生は知らないだろうから、覚えて欲しい」
なるほど。たしかに新聞部が写真付きで生徒会のリコールの号外を出していたけれど。顔写真付きとはいえ、モノクロだったから、しっかり見なければわからない物だった。
号外も掲示板に張り出されただけで、配られたわけでもなかったし。
新メンバーの説明をしている桐生会長の声は、講堂にしっかり響く綺麗な声だった。
名前を呼ばれて前に一歩出て、軽く頭を下げるだけの生徒会の面々。そういえば、こんな風に生徒会の人たちが挨拶をする場面は一切無かったな、と思う。
「掲示板でも知らせてはいるが、長期休みの間に、生徒会の休みの日も有る。外出や外泊届はその時には受け付けられないから、なるべく早めの提出をして欲しい」
あぁそういえば、生徒会休止日程が寮の掲示板に張ってあったな。恭はネットの掲示板にも有るって言ってたけど。
俺は相変わらずネットは見れないので、ネット掲示板の存在は恭から知らされて初めて知ったんだけど。
寮の掲示板にも張ってくれているのは、本当に助かるなぁ、と思った。まぁ、重要事項はだいたい両方に張り出すみたいだけどね。
携帯電話を持たない俺には、寮の公衆電話はありがたいし。そういうところは、最先端と旧式を取り合わせてくれている。
俺みたいにまだまだ力の安定が出来ない生徒は、意外と多いのだ。
俺のような超能力者だけでなく、霊能力者も機械に影響与えてしまう力が有るらしい。
簡単な修了式は、さっさと終わった。
クラスに戻って担任からの話とか、成績表とかもらって、今日はすぐに寮に戻れる。
成績表の心配は、俺はあんまりしてないんだけど。心配なのは、この学校特有の、能力判定成績表だ。
成績表の心配はしてないとか言ったら、陸也とかに怒られそうだな。
能力はDからAまでの判定なんだそうで。特級のSなんて判定も有るらしいけど。俺にはまだまだ先の話だ。
というか、Sなんて、そうそう出ないらしい。ここ数年出てないとか。
「入学してから三カ月、頑張った生徒も居れば、もっと頑張らなければならない生徒も居る。これまでの間に、自分がどの様に頑張るべきか気付けた生徒も居るだろう。長期休み中も、鍛錬を怠らず、新学期に備えて欲しいと思う。さて、成績表を渡そうか。一緒に能力判定表も渡すからな」
担任はしっかりした人間で、俺はよく超能力の安定を見てもらっていた。
「学業をおろそかにしてもいけないからな。夏休みの課題は出る。それはしっかり夏休み明けに提出すること」
教卓に積まれている冊子は、夏休みの課題か。分厚そうだし、面倒そうだな。
面倒だと思った生徒により、少し教室がざわつく。
「おいおい。これでも普通の学校に比べたら、少ないぞ。読書感想文は無いし、この冊子だけ出来たらそれで終わりなんだからな。さて、出席番号順に呼ぶから、成績表と冊子を一緒に受け取れ」
確かに。他に比べたら、少ないのかもしれない。
最後の授業で、夏休みの課題をそれぞれの教科で言われなかったのは、こういう冊子が有るからだったのか。
いわゆる、高校版夏の友だな。あんな友はいらないけど。
出席番号順にもらって行き、成績表を見て一喜一憂しているクラスメイトを見る。
俺はとりあえず、成績表から開いてみた。うん。「優」ばっかで良かった。ちょっと体育は不安だったんだ。
あれだ、この学校特有なんだ。体育も。だって、能力使って良いとか。運動神経持ち合わせてる上に、能力でさらに上がってるクラスメイト多数居たんだよ。なんだこの体育とか思ったよね。
まぁ、球技大会では、上級生はもっとすごいと知ることになったんだけど。
能力判定成績表を、少しだけ開いて、ギリギリ見れる状態にしてみる。
うん。Dって見れた。
やっぱりな。ちくしょう。まだまだ俺は制御不足だよなぁ。
恭とか普通にA判定もらってそう。だってあおとか連れてるくらいだし。あ、雷葵もいるけどさ。
二人も精霊連れてるんだから、恭の能力は安定してるってことだろうなぁ。うらやましい。
まぁ、他人をうらやんでいても仕方ないから。俺が自分で頑張るしかないわけで。
特に能力なんて、自分自身のだからさ。
学業は、誰かに教えてもらえば、成績は上げれるかもしれない。
でも、能力は教えてもらうことで、原理はわかるかもしれないけど、理解して扱うのは自分自身だ。
担任に能力の安定を見てもらって、アドバイスはもらえても、それを活かせるかどうかは、自分次第なんだよな。
それは痛感してるから。
判定Dはやっぱり痛いや。親にどう言われるか。学校をここにしても、無意味だったとか、言われませんように。
なんか母親が、俺が離れてくの嫌がってたし。かと言って、離島に高校は無いんだけどな。高校通うのに、毎回船に乗ってとか、勘弁してほしいし。だいたいの奴らは高校通うのに、島から出てるし。
島の人口が減るの、嫌がってるだけなんだろうな。
島から出て行った若いのは、戻ってこないとか。爺さんたちがよく言ってたし。
そう言われても、さすがに高校は出ないと就職は厳しい。
いや、島で暮らすなら、畑作業を覚えれば良いから、農業系の専門学校でも良いのか?
まぁ、専門職をするにしても、やはり学校へは通うだろう。
俺はこの先にどんな仕事するかは決めてはないけど。何の職業に就くにしても、俺のこの能力は、しっかり制御出来なきゃなんないと思うわけだ。
就職先で、困らない為にも。
島に戻って、親の農業継にしても、この能力が制御出来てないと、大変なんだよなぁ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
38 / 40