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ゲリラ豪雨 side 信乃
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『現在、新宿は寒冷前線が通過している為、大粒の雨が降っています!このゲリラ豪雨と呼ばれる現象は、上空の気温と地上の気温の温度差によって上昇気流がはっs.... ピッ』
新宿は雨に濡れている。
俺は聴いていたラジオの天気予報を切った。外では現在進行形で雨粒が屋根を叩く音が鮮明に聞こえる。何も無い家の中にその音は良く響き、お前は独りだと突きつけられている様だ。
父親は医者、母親は弁護士。学校から帰っても出迎えてくれる人は皆無。母も父も帰宅すれば疲れているから今度にしてくれと、話すこともせずに眠るだけ。形だけの家族。
新宿は豪雨。
俺の中で、何かが蠢いた。
それは衝動的で醜く真っ黒い何か。欲求。愛を求める......。愛欲。
気がつくと俺は傘も持たず、鍵も閉めずに豪雨の中へと走り出していた。
当ても無く雨に打たれて走り続ける。傘もささずにこの暑い中、長袖のトレーナーを着て走り行く俺は、きっと通行人の眼にさぞ奇妙に映るに違いない。
それでも良かった。雨に打たれるのは気持ちが良かった。胸の真ん中に穿たれた大きな穴を覆い隠してくれる様で。
本当は人気のないところに行って叫びたかった。辛いと。しかし、このコンクリートジャングルのど真ん中に人目を気にせず叫べる場所は無い。だから少しでも現実から目を逸らしたくて俺は雨に打たれ続けた。息が切れて立ち止まったその後もずっと。
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