アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
タイムカプセル #4
-
玄関に入ると修のお母さんが笑顔で迎えてくれた。
「俺の部屋行ってて。智はちょっと手伝って。」
修は握った手を離さずに、智に笑いかける。
和哉と雅範はしぶしぶ2階に上がっていく。
修が智を連れてキッチンに入っていくと、
「智君、久しぶりね。あいかわらず、女の子みたいに可愛い。」
修のお母さんは、そう言って笑うと、
ジュースとお菓子を手渡してくれる。
修のお母さんが用意してくれたジュースとお菓子を持って、
二人は階段を上っていく。
「修君、ごめんね。おいら頑張ったんだけど…。」
「いいよ。でも、今度は二人でね。」
修が目尻を下げて笑う。
「うん。……でも、どうして、ジュン君も修君も二人だけって言うの?
おいら、みんなで遊びたいな…。」
「智…。」
修は階段の途中で立ち止まり、智を見る。
「俺もみんなで遊ぶの楽しい。でも、たまには二人で遊びたいなって
思っただけなんだ。」
「そっかぁ。」
智はふにゃりと修に笑いかけた。
「じゃ、みんなが一緒でもよかったね。」
「う、うん…。」
修はあいまいに笑う。
修の部屋のドアを開けると、和哉と雅範が修のおもちゃを物色していた。
「ねえねえ、修ちゃん、このソフト、新しいやつ?」
雅範が修の机の上から、ソフトのケースを開いて修に見せる。
「あ、お前、かってに開けんなよ。」
修が雅範からケースを取り上げる。
「修ちゃん、これ、恥ずかしくないんですか?」
和哉が摘んで見せたのはフォトフレーム。
園服の智と修が仲良く手を繋いで写っている。
「いいだろ!お母さんが飾ったんだよ!」
修はフォトフレームを和哉から奪うと、手早く引き出しの中にしまった。
「ほら、ジュース!」
さっき、修が慌てて机の上に置いたせいで、ジュースがトレイにこぼれている。
一つ一つティッシュで拭きながら、みんなに渡していく。
「じゃ、宿題、始めますか。」
修がそう言うと同時に玄関のチャイムが鳴った。
修の部屋は青系統で統一されている。
カーテンは水色。ベッドカバーは青のギンガムチェック。
壁は白かったが、床に敷いてあるラグも青。
爽やかな印象は修に似合っていた。
だが、今のこの部屋の雰囲気はどんよりとしていて、
全くこの部屋に合っていなかった。
みんな、シーンと静まり返って宿題をしていた。
一人、淳一を除いては。
淳一は智の背中に背中をくっつけて、ゲームをしている。
後から来た淳一は宿題を持ってきていない。
ゲームの音がピコピコ鳴っている。
「お前、何しに来たんだよ!」
修が淳一に向って怒鳴る。
「修ちゃんの気持ちがよ~くわかったよ。俺だけ呼ばないのな!」
「俺は智以外、誰も呼んでない!」
あれ?和哉は?と智が顔を上げるが、和哉はニヤッと笑ってすぐに宿題に戻った。
「いいじゃん、いいじゃん。みんなで仲良く遊ぼうよ!」
雅範がニコニコ笑いながら、鉛筆を指で摘んでブラブラさせる。
「んふふ。そうだよね。修君も、みんなで遊びたいって言ってたくせに。
照れ屋さんなんだよね。」
智は修に向ってふにゃりと笑い、大きくうなずく。
「へぇ~、みんなで遊びたかったんだ。俺には声かけないのにぃ。」
「だからっ!誰も呼んでないんだって!」
「まぁまぁまぁ、ここは落ち着いて、早く宿題終わらせましょう。」
和哉がみんなをゆっくり見回して、宿題の状況を確認する。
「俺は宿題できないけどね!」
淳一がぶっきらぼうに言うと、智が淳一に寄りかかる。
「淳一君、どうしてここがわかったのぉ?」
「智のウチに行ったらさ、修ちゃんちに行ったよって。」
淳一は寄りかかられた背中を、優しく跳ね返す。
「そっかぁ、ごめんね。」
智も背中を跳ね返す。
「智は悪くないよ。悪いのは…あいつだから。」
淳一がクイッと顎で修を指す。
「なんで、俺が悪いんだよ!」
「仲間はずれとか、するからさっ!」
「お前だって、朝、内緒話してたじゃないか!」
和哉も雅範も内緒話に反応する。
「そうだ、そうだ!朝の!なんだったの?」
雅範が興味津々で淳一に寄っていく。
「え?…あ……いいじゃん、なんだって…。」
「よくないよ。気になる。言って!」
雅範は淳一の隣までくると、淳一の腕を掴んで迫る。
「そうですよ。内緒話なんて…女じゃないんだから…。」
和哉も宿題の手を止め、雅範を援護する。
「言っちゃえよ。ジュン。智だってみんな一緒がいいよね~。」
修が智に笑いかけると、
智もうなずいて、背中の淳一に向き直る。
淳一は口をギュッと結んで、言おうとしない。
「みんなで行こうよ。淳一君。」
みんなに囲まれ、最後に智にまでダメ押しされて、
観念したのか、淳一は結んだ口を開いた。
「あの川のずっと向こうに竜の木があるんだよ。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 16