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タイムカプセル #8
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やはり、10分進んでもコンビニはなかった。
5人は引き返し、さっきの場所に戻ろうとしたが、
今度はさっきの場所がわからなくなっていた。
「もうさっきの場所、通り過ぎちゃった?」
雅範が不安そうに淳一に聞く。
淳一も不安を隠せない。
道に迷ってしまっては兄ちゃんの地図も全く役に立たない。
「いや、まだ着いてないよ。だよな?」
修に同意を求める。
「わからないよ…。でも、もう10分以上は戻ってるはず…。」
修はチラッと和哉を見て、意見を求める。
「見覚えのある景色はなかったと思いますけど…。」
和哉も周りをキョロキョロしながら、ちょっと不安そうに答える。
「どうする?」
淳一がみんなの顔を見回す。
「う~ん、じゃあさ、冒険しちゃう?」
智がニコニコしながら、大胆なことを言う。
「冒険?」
雅範がすぐに食いつく。
楽しくなってきた!と言うように、目をキラキラさせる。
「うん。だって、どっちに行っていいかわかんないでしょ?
だから、運を天に任せて…。」
智の言葉にみんな顔を見合わせる。
「どういうこと?」
修が腕組しながら考えている。
「だから、こうさ…。」
智は自転車を止め、周りをキョロキョロ見回すと、
道の脇に転がっていた棒を拾ってきてみんなに見せる。
「例えば、これを…。」
智が棒を真っ直ぐ地面に立てると、そっと手を離す。
「ずっと真っ直ぐ行ってさ、分かれ道はこれで決めるの!」
すっげぇいいこと思いついたでしょ?と、智は満足げにうなずいた。
「それは…。」
修は智の言うこととは言え、かなり危険な提案だと、
みんなに言いたかった。
「いいですねぇ?」
和哉がにっこり笑って智の肩に手を掛ける。
「でしょ~!」
「俺も、俺も!俺もいいと思う~!」
雅範が手を上げて答える。
修と淳一は目で危険信号を送りあう。
こうなると、決定権を持つのは和哉になる。
智と雅範が一緒に盛り上がり始めると、誰も止められない。
そこに、和哉も乗っかったのだ。
多数決では負けてしまう。
「でもさ、智はさ、竜の木はいいの?」
淳一が軌道修正を試みる。
「え?竜の木に向かうんだよ。これで!」
智が手に持った棒をみんなの前に掲げるように差し出す。
「それだと、いつ辿り着けるかわからないよ?」
修が援護を出す。
「そうかなぁ?修君もそう思う?」
「うん。だってせっかく地図があるんだから。地図で行った方がいいよ。」
「でも、今、どこにいるかわからないんだよ?」
「大丈夫。まだそれほどずれてないと思うんだ。」
修は淳一に地図を出すよう、手を伸ばす。
「え~!いーじゃん!楽しそうなのに。ね。智!」
雅範が不満そうに口を尖らす。
淳一が雅範を抱え込んで口を塞ぐと、修に地図を手渡す。
「ほら、智。宝の地図。」
「……宝の地図………。」
その言葉に智の目がキラキラと輝く。
修はウンウンとうなずいて話を続ける。
「まだ、1本か2本、道を間違えてるだけだと思うんだ。」
「そうかな?本当に辿り着けるの?」
和哉が意地悪そうに唇の端を上げて笑う。
「辿り着けるよ!」
淳一が声を上げると、同じくらい声を上げて和哉が言う。
「本当に、そんなとこあるんですかね~?」
「あるよ!」
自転車がなかったら、掴みかかりそうな淳一を修が手で止める。
「だから、もう1本、ずらして探してみようよ。」
「それで本当に行けるんですかね~。智。」
和哉はさらに意地悪そうに唇を引き上げる。
「でもカズ、これ、宝の地図なんだよ?」
「え?ジュンのお兄ちゃんが書いただけでしょ?」
「でも、竜の木に続く、宝の地図…。」
智が目を潤ませて地図を空にかざす。
「そっかぁ。宝の地図かぁ…。」
雅範も空を見上げて目と汗をキラキラさせる。
「よし!行くよ!」
すかさず、淳一が自転車を右に向けて言う。
修がそれに続き、智と雅範もそれにならう。
和哉もしぶしぶ向きを変え、目の前の道路を渡った。
もう1本向こうの道は商店街になっていた。
小さな店が並ぶ、どこか懐かしい商店街。
確かにコンビニは在りそうな雰囲気だ。
昼時を少し過ぎたくらいの時間だが、人はまばらで、
自転車の5人にとっては好都合だった。
「うっわぁ、俺、こういう道、好き~っ!」
雅範がはしゃいで先頭の淳一の隣に並ぶ。
「雅範!狭いんだから、並んじゃダメだよ!」
修が雅範を引っ張ろうと、雅範の隣に並ぶ。
「修ちゃん、言ってることとやってること違う~。」
和哉が智に向って笑う。
「そこがいいんだよ、修君は。んふふ。」
その時、淳一が急ブレーキをかける。
慌てて4人もブレーキを握る。
「どうした?」
修がびっくりして淳一の顔を覗くと、
淳一がずっと先を指差して言った。
「あった!コンビニ!」
みんなは一斉にずっと向こうのコンビニを探す。
「ある~!ジュン君!」
智が嬉々として前方を指差す。
「どこ?どこにあるの?」
雅範が背伸びして遠くを見る。
「ありますか?コンビニ?」
和哉は目を細めて首を伸ばす。
「智。目、良すぎじゃない?」
修も体を左右に移動させてコンビニを探す。
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