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悪夢の続き
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《白石 夕》
家に向かう車内は静かで、窓の外に広がる夜の世界と遮断されている様だった。
オレが着替えの服や歯ブラシを取りに行くと言ったら、
「そんなもん全部買ってやる」と買い物に行く準備をしやがったクソ金持ち野郎を押しのけ「オレのもの一つでも買ったらここから歩いて家に帰る」と言って説得したのはいいものの、
勉強道具やケータイや財布は全部杉野の家にあるカバンの中だから殆ど取りに帰る物なんて無いし、
わざわざ車出してくれなくてもいいんだけど、何が何でも取りに帰ると言った手前言い出しにくい。
杉野のリムジンの様なクソ高級感溢れる車の座り心地に少しうとうとし始めた頃オレの家に着いた。
家の前に車を停め「すぐ戻る」と言って車を降りた。
家に入り靴を脱ごうとしていた動きが止まる。
玄関には明らかにオレのものじゃない革靴が綺麗に揃えて置いてあった。
背筋に冷たくなり心臓がバクバクと鳴り出す。
「やあ、夕。おかえり」
聞こえてきた声にビクっと肩が揺れた。
けれど、そんなことは1ミリも顔に出さずその人を見る。
「ただいま。泉さん」
ニコッと笑って靴を脱いだ。
最近泉さんが家に来ていなかったから油断して窓の明かりを確認するのを忘れていた。
.........どうしよう。外で杉野待ってんのに。
「どうしたの夕、早くこっちおいで。何度も電話したのに繋がらないから心配したよ」
吸っていた煙草を、吸殻が山のように積み上がった灰皿に押しつぶして立ち上がった。
その灰皿を見て指先が震えたのを隠すために手を後ろに隠した。
「あーごめん。充電切れてたの忘れてた」
「充電はまめにしないとダメじゃないか夕。何かあってからじゃ遅いんだよ?」
「あはは、ごめん。今度から気をつけるよ」
「.........ねえ夕、今までどこ行ってたの?その服誰の?」
笑いながら近づいてくる泉さんからから1歩下がって距離をとる。
今のオレは杉野のぶかぶかのTシャツにぶかぶかのハーフパンツを履いていて自分のだと誤魔化せる見た目ではなかった。
やばい.........。
手に汗が浮かび背中のシャツを握った。
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