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悪夢の続き5
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一教師の台詞とは思えない言葉を並べる杉野に泉さんが、はっと乾いた笑いをもらした。
「夕は痛いくらいなのが好きなんだよ。酷いことされてめちゃくちゃになるのが好きなんだよ。そうだろ?夕」
こんな状況になっても笑っていられる泉さんの神経に寒気がした。
杉野の服を掴み何も言わないオレに、「...夕?」と泉さんの余裕そうな顔が剥がれていく。
「照れくさくて言えないだけだよな、夕。だって、いつも最後には笑って『オレは大丈夫だよ』って『仕事で疲れてたんだよね、仕方ないよ』って言ってくれるもんな。そうだよな.........夕!!」
ビクッと肩が跳ねた。
縋るような目で見てくる泉さんに胸が痛み、笑顔を作ってそうだよ、と言おうとした時杉野の手がオレの目を覆い隠した。
「ゆう.........」
泉さんの悲しそうな声が聞いていられなくて杉野の胸に顔を押し付けた。
「ごめん.........泉さん」
それだけ言うともう泉さんは何も言ってこず、杉野がオレを抱いたまま扉を閉めた音がした。
泉さんを傷つけてしまった罪悪感で胸がジリジリと痛む。
助手席に下ろされ、杉野が運転席に座った。
オレが勘違いさせてしまったせいで泉さんを傷つけた。
泉さんを悪者にしてしまった。
本当に悪いのは全部オレなのに、優しかったあの人をここまで追い詰めたのはオレなのに。
オレが1人で解決しないといけない問題なのに杉野を巻き込んで。
何の関係もない杉野にまで迷惑かけて、何がしたいんだよ。
オレが自分の責任から逃げようとしたから。
杉野の優しさに甘えようとしたから。
全部.........オレが弱いから。
「.........ごめんなさい」
誰に向けての言葉なのか自分にもわからずもう1度ごめんなさい...と呟く。
何度も謝るオレの頭を杉野が優しく撫でる。
オレに誰かから優しく撫でてもらう資格なんてない。
泉さんを狂わせて、杉野に迷惑をかけた犯人はオレ1人なんだから。
.........なのに、なんで.........こんなに涙が溢れて来るんだろう。
「ふぇ.........っう...ごめんなさぃ.........」
「.........すぐに助けに行けなくて悪かったな」
片手で運転しながら静かにそう言う杉野にまた涙が止まらなくなる。
違う。悪いのは全部オレなんだ。杉野はオレの被害者で謝る事なんか1つも無いのに。
「頑張ったな」
そんなふうにまた優しく撫でるから、オレはその優しさに甘えてしまう。
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