アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
プライドvsプライド -5
-
「えっと…8.0m/s……です」
自分なりに捻り出した答えを口にした。
ほんの1秒ほどの沈黙が痛い。
達の前で恥はかきたくない、
どうか正解と言ってくれと心の中で祈りつつ
先生の口が動くのを待った。
「正解だ、有効数字まで完璧な回答だな」
ポーカーフェイスの教師は俺に向かって
一言そういえば何食わぬ顔で授業に戻った。
俺は安心感で力が抜けるような感じで
椅子に座る。
横に目をやると、達の表情は、
笑顔なのか、それとも舌打ちでもしたげな
つまらなさそうな顔なのか、
なんとも言えない中途半端な感じだった。
このままでは他の教科でも達のペースに
持っていかれる。
何とかして俺はコイツより上に立たないと
いけない、
だから何としてでもテストの勝負には
勝たなくては…。
一人横にいる達に対して宣戦布告を
するのだった。
その後は得意教科が続き、彼にヘルプを
求める状況には全くならなかった。
勿論達とは物理の時間のそれ以外に会話を
交わすことはなく、昨日のように俺は一人
家路に着く。
もっと別の話がしたい。
あの頃の思い出話とか、お互いの好きなこととか
本当はもっと気持ちを共有したかった。
でもそれは今ではもう叶わない。
俺も、達も、お互いを突き放したから。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
21 / 57