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聞きたいこと -7
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『まもなく、フォルテリア、
フォルテリアです』
癖のある声で車掌がアナウンスをする。
窓の外に揺らめくのは、
絵に描いたような近未来の都市を
イメージとした大型ショッピングモール。
ザリガニのハサミのような形をした
2つのアーチが向かい合っている。
銀色に輝くそれの下を、たくさんの人が
行ったり来たりしている。
フォルテリアとは15年ほど前、
大企業が買収した土地に建設した
国内最大級の複合型施設だ。
巨大なモールだけでなく、
遊園地やドーム、水族館など
ありとあらゆる娯楽が揃っており、
近くの小学校は遠足の半分近くを
この施設に頼っている。
モール建設と同時に周囲には
計画的に高層マンションや住宅街が
できて、今ではそれらを含めた
この辺り一帯の地域をフォルテリアと呼ぶ。
といっても地価は馬鹿みてえに高いし、
全て15年以内に造られたもので、
しかも立派な家ばかり並んでるから、
ここから通っている高校生は基本的に
お坊っちゃまお嬢様と言っていいだろう。
高校のある聖風台駅、
俺の最寄の聖風公園駅、
そしてこのフォルテリア駅、
という順に路線に並んでいる。
こう考えると俺は便利この上ない場所に
住んでいるということだ。
高校から2駅ということもあり
放課後は多くの高校生で賑わっている。
俺も昔はほぼ毎日駆と遊びに来たな…。
あ、あのゲーセンでハマってたゲーム
今もまだあるんだろうか。
初めて二人でプリクラも撮ったよな。
あ、画面の指示で駆の頰にキスしたっけ…。
遊園地も暫くいってねぇし…、
絶叫マシン結構あって楽しいんだよな。
駆は昔絶叫苦手だったから、
いつも俺の手握って乗ってた。
それから水族館にいた綺麗な魚に
駆が名前つけたんだっけ。
んーと名前は…
っいけねぇ、駆は忘れるんだった。
「おい達騎〜なにずっとぼーっとしてんだよ」
気がつくと電車が停止して扉が開こうと
しているところだった。
秀馬が俺の顔の前で手を上下に振り、
やっと意識が現実に向く。
そうだ、俺には今大切な親友がいる。
過去がどうした、大事なのは今だ。
「悪ぃ、宿題の問題考えてた」
「……っほんと真面目かよお前」
秀馬が呆れたような顔をすると同時に
プシューと音を立てて扉が開く。
遊園地に向かう様子の女子高生、
子供連れの若いお母さん、
フィットネスに行くのだろうか、
ジャージを着た年配のグループ。
様々な人がどんどんホームへ降りて行く。
俺たちもその後に続いた。
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