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聞きたいこと -21
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「これ、お前が好きだったやつ」
「…ありがと」
雨雲に覆われた空のせいで少し薄暗い部屋。
かつての、二人だけの場所。
そして、久し振りに、二人。
達は俺の家族がいつも飲んでいるコーヒーが
大好きだった。
俺の母親が大学の時にルームシェアをしていた
ブラジルの留学生が送ってくれているもので、
日本ではなかなか手に入らないらしい。
「…これ飲むと、色々思い出すな」
達はシャワーをしたばかりでまだ少し湿った髪を
タオルで乾かしながら、時折カップに口を付けた。
「お前は最初コーヒー飲めなかったっけ、」
確かに、コーヒーだって達が飲めるから俺も、と
必死に苦いのを我慢して克服した覚えがある。
その甲斐あって今では美味しく味わえるのだが。
「あー、そうだった気がする」
俺はどうして、達にできて俺にできないこと、
というものの存在を極端に嫌うのだろう。
コーヒーが飲めるか飲めないかなんて、
別に何ら人間としての指数に影響しないというのに。
そう考えると、もしかすると俺は、
達になりたかったのかもしれない。
達は誰よりも憧れの人だった。
テレビの中でカッコよく歌うアイドルよりも、
世界で活躍する最高のサッカープレイヤーよりも、
誰よりも達を尊敬していた。
俺は達に近づくことで自分に誇りを持った。
達と同じことが出来るということが、
本当に嬉しくて仕方なかったんだ。
じゃあ俺って、何?
「駆」
「ん?」
「…この事、誰にも言わないでくれ」
んなこと言われなくても分かってるよ。
「馬鹿、言うわけねえだろ」
「…そか」
俺は大好きな、憧れのお前の弱い所を
他の奴に教えたりなんて絶対にしない、
むしろ、俺だけが知っていたい。
俺と達だけの、秘密。
あぁ、また大好きとか思ってる。
ほんと重症だ俺。
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