アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ある雨の日。
-
あれは俺が18の時。
とある理由で自暴自棄になり、せっかく進学した大学にも行かず街をふらふらと彷徨っていた。
今思うと、ひとりで家にいるのが怖くて、誰かの人肌に縋りたかったのかもしれない。
その夜は雨が降っていた。
繁華街の薄暗い路地裏で物陰に隠れてしゃがみ込んで、ずぶ濡れになることを気にもせず、ぼぅ、としていたんだ。
寒さで意識が遠のきはじめた時、あの人は俺に声を掛けてきた。
「こんばんは」
最初はなんて言ってるか分からなかった。
ただ、ふと雨が降り掛かってこないことが気になって顔を上げたんだ。
「あれ、聞こえなかったのかな?」
「…誰?」
「通りすがりのお兄さん。ね、此処で何してるの」
「何もしてない……けど、寂しくて、助けて欲しくて歩いてたら、疲れちゃって」
あの人は自分の衣服が濡れることを気にもせず片膝をついて、ジャケットのポケットからハンカチを取り出して俺の顔を拭った。
「そう。なら、俺が助けてあげよう」
何を言ってるんだこの人。
「けどね、タダで助けてはあげない。君が俺に何もかも委ねるってことが条件だ」
まるで人身売買だ。俺に自分で自分を売れと言っているかのようで。
ーーーああ、でも、それでも助けてほしい。
「…本当に、助けてくれるんですか」
「勿論。約束しよう。口約束は特に破らない質だ」
そうして俺はあの人の手を取ったのだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 5