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18歳以上ですか?
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約束しよう2
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(雪千語り)
街コンのシステムを説明しよう。
会場は商店街の店達だ。中華料理、居酒屋、カフェ、洋食屋等飲食店にて行われる。各店では街コンメニューが用意してあり、入口で配られたチケットと交換できる。大体はフードとドリンク一杯がセットだ。
店を移動しながら、気の合う友人、恋人を探してもらう、というのが大まかな流れだ。お酒を出すので、未成年は参加出来ない大人の集まりとなっている。
さっき恵が来たけど、あいつは18歳じゃないか。そのうち夏緒に見つかって怒られるだろう。
ざまーみろだ。
俺がいる本部の後ろにも、町営の青空居酒屋がある。ピザやらバーニャカウダ、パスタとか洒落た料理が並んでおり、あちこちで話に花が咲いていた。
出会いじゃなくても、友達を作ろうと思えば気軽に参加できるイベントなんだと、スタッフになって初めて知った。
俺の性格だと積極的には参加しないだろうが、夏緒と一緒なら客として行ってみたいと思った。
開場して2時間が過ぎようとしている。
受付は暇になってきたが、帰る人は少ない。見回りに行っている涼太や岳から定期的に連絡があり、大きなトラブルは無いようだった。
このまま無事に終わったら、片付けて、打ち上げして、それから、それから……また夏緒ん家に泊まるのかな。俺、いちゃいちゃしたり甘いのは苦手なんだけども。やったことないからどうしていいか分かんない。
なんて思っていたら、夏緒が沢山の袋を抱えて1人で戻ってきた。
「俺さ、スタッフで飲めないし、つまんないから逃げてきた。料理を沢山貰ってきたから、こっちで食べよ。誰か来たら対応すればいいからさ。もう、見回りは本業で充分やってるから散々なんだよ。」
包を解き、サンドウィッチや唐揚げを並べ始める。生ビールもあったので、遠慮なく乾杯することにした。もう誰も受付に近寄って来ない。タープの奥の方で、長テーブルに向かい合わせで座った。
「夏緒サンキュー、俺も暇で腹減ってたんだ。」
「そう言えば恵に会った。未成年だから注意しといたけど、あれは飲みにきてるよな。ペアルックが腹立つわ。マジで真っ当な道を歩くつもりらしいよ、あのガキは。」
「分かる。ボーダーは無いよなー。あれは酷い。」
同じところに注目していたので、思わず笑う。生ビールに口をつけようとすると、腕を引っ張られた。過剰に意識してしまう自分が恥ずかしい。
タープの外は笑い声で溢れて、内とは別世界だ。まるでここは俺と夏緒だけが存在するような静かな空間に思える。
「今日はお酒は飲んでも大丈夫なの?」
「…………今は大丈夫な薬しか飲んでいない。」
嘘だった。今日のために、薬は3日前から飲んでいない。心配かけるのが嫌だったし、どうせ怠くなるなら同じだと思ったのだ。
「じゃあ、改めて乾杯しよっか。」
「おう、かんぱっ…………」
グラスを合わせて再び飲もうとしたら、突然頬に唇が触れた。不意打ちでビールが手から滑り落ちそうになる。
「なっ………んだよ………」
「ごめん……どうしても触れたい……勘弁して……お預けが辛くて辛くて……正直街コンなんかどうでもいい。目の前に好きな人がいて、好きな人も自分と同じ気持ちなんだよ。他に大切なことがある?限界なんだ。俺はユキちゃんを抱きたい。それが無理だから一時しのぎで触ってるの。」
夏緒の目は虚ろで、熱を帯びたように見える。何と対応していいのか、思考が己のキャパシティを超えた。
とりあえず、目の前の生春巻きを摘んで口に入れる。
「ちょっとユキちゃん、食べてないで答えてよ。やだとか、バカなこと言ってんじゃねーよとかさ、何か反応してくれないと、俺泣いちゃうわ…………」
生春巻きは味がせず、ゴムを噛んでいるみたいだ。ゆっくり咀嚼をして飲み込んだ。
「俺も同じだって言ったら、お前はどうすんの。」
「…………えっ………えっ、えええっ!!…………それなら帰る。こんなとこにいつまでも留まってるのは嫌だ。意味が無い。」
夏緒はビールを飲まずに机へ置く。
無言で片付けをして、隣のタープにいたスタッフの女子に留守をお願いした。
そして、俺たちは連れ立って街コンを後にする。後始末は岳に無理やり託した。岳は沢山の女子と関われて楽しいだろうから、やってくれるだろう。
出来る男を見せる時だ。
途中でやるべきことを放り出した。授業をサボった小学生の頃のような、すがすがしい気持ちだった。
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