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朝
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懐かしい夢を見た。昔の夢だ。
亜樹に無理を言って遅くまで遊んで帰ったら、亜樹のお父さんはとても心配をしていて、僕たちの姿を見ると安心したように強く抱きしめてくれた。
でも僕は、あの時気付いてやるべきだった。亜樹の震えが止まっていなかったのも、亜樹の足を痛めたような不自然な歩き方も、心配する亜樹のお父さんの出てきた家の中の散乱具合にも。
「……亜樹」
亜樹は僕の唯一の親友だ。親が同じ頃に亡くなったという境遇が近いせいか仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
亜樹の家は僕の家と違って大きくて、走り回れるほどの庭まであって、おしゃれな西洋家具が置かれていた。それに反して僕の家は小さく、狭く、それでも父さんも母さんも優しかった。
小学校6年生の時だった。亜樹は中学受験の勉強が大詰めになり、僕はサッカークラブの練習に明け暮れていた頃、僕たちの親が居なくなった。
亜樹のお母さんと、僕のお母さんは同じ頃に忽然と姿を消した。どう亡くなったのかは誰も教えてはくれなかったけれど、同じ会場で一緒にお葬式がされた。今でも覚えてる。父さんは泣いた。亜樹のお父さんも泣いた。僕も泣いた。でも亜樹はひとり、泣くどころかただ呆然と立ち尽くしているだけだった。
ピピピ、とケータイのアラームが鳴り響く。
「………朝」
どうか夢であってくれと願い、そのまま朝が来てまたそれが現実だと思い知らされる。
僕は深くため息をついた。
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