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次の日、亜樹は学校に来なかった。
いつも通り朝、亜樹の家に行くと「亜樹、体調が悪いみたいでお腹が痛いって言うもんだから今日のところは休ませるよ」亜樹のお父さんはそう言った。
「そうですか…、えっと、じゃあ放課後またきます」
「本当かい、じゃあそうしてほしいね。亜樹も喜ぶと思うから。あ、ちょっと待ってくれるかな」
そう言って亜樹のお父さんは家の中に戻ると巾着袋を持って戻ってきた。お弁当のようだ。
「亜樹の分だったんだけど今日は食べられないみたいだから。もし良かったらだけど貰ってくれないかな?」
「いいんですか?ありがとうございます!」
手作り弁当なんて何年振りだろう。嬉しくて手早に巾着袋をカバンに入れると亜樹のお父さんは微笑んでいた。ふわりと、その手が僕の頰まで伸びてくる。
「聡子さんよりは上手くできてると思うよ、ハンバーグは焦げていないからね、臨くんの口に合うといいな」
冗談交じりに言っているとわかっていても笑えなかった。顔がひきつるのがわかる。何故この人は僕の母さんの手料理の味を知ってるんだ…?
母さんは確かに料理が苦手な人だった。亜樹のお父さんが言う通り、ハンバーグは焦げた上にボロボロだったし米すらも水の分量を間違えてお粥になることがしばしばだった。
でも亜樹の家と一緒に母さんの料理を食べたことはないし、その話をしたことはなかった。
「おっと、そろそろ私も仕事に行かないと…、じゃあ臨くん。わざわざありがとう。またおいで」
そう言って、笑顔で亜樹のお父さんは扉を閉めた。
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