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「大丈夫、何も不安がることはないよ。さっき臨くんの家には電話を入れて置いたからね」
「あの…僕、帰ります。あと…亜樹のお父さんには悪いけど亜樹も連れて帰ります、亜樹、怪我してる」
そう言うと亜樹のお父さんは悲しそうに顔を歪ませ、僕に手を伸ばした。
パシッ
頰にジンとした熱さを感じた次の瞬間、亜樹のお父さんは馬乗りになり僕の胸倉に掴みかかった。
「臨は悪い子だねぇ、そんなところまで聡子に似なくていいんだよ。なんだ、私の言ってることが聞けないって言うのかい…?」
「な、に……言って」
心臓がドクンドクンと、危険だと知らせるように早く脈打つ。
亜樹は嗚咽を漏らし蹲って居ながらも逃げろ、と微かな声で言い続ける。
そして目の前の男は僕の頰をもう一度叩いた。
「私を見なさい!」
「っ……あ」
亜樹に暴力を振るっていたのはこの男で間違いない。確定だ。なのになんで、僕は動けない。
「なんだできるじゃないか、臨。いい子だ、ほら私の名を呼んで」
呪いにかかったように僕は、急に優しい目になった男から目が離せなくなる。
「……あ、…ぁ」
声が、出ない。
「さっき教えたろう、早くしなさい」
「は、………は、…は…る…」
絞り出すように言葉を紡ぐと、男は満足したように頷くと僕にキスを落とした。
名前を呼んでしまったことをきっかけに、この男…春が鎖のように僕を蝕むなんてこと、この時の僕には分かり得ないことだった。
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