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出会った2人。
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俺は、藤田征次郎。 この大正で知らないものは無いと言われるほどの大財閥の御曹司だ。 1人息子で両親からもかなり溺愛されてきた。
周囲の期待も多大なものなのだろう。
そんな俺は今窮地に立たされている。長くなるが聞いてくれ。
遡ること数年前。 俺は20歳だった。
大財閥の御曹司という肩書きを背負い、俺は東亰帝都大学の門をくぐった。 俺は、もともと学力には自信があったが親の力もあったのだろう大日本帝国随一を誇る大学にいとも簡単に入学した。
そこで可憐な女性に出逢った。
思わず目で追いかけたが、声をかけることは叶わなかった。 親の期待に応えるためだけに入った大学だったが、彼女のことを考えると大学も悪くないなと思った。分かりやすく言う一目惚れというやつだろうか。
そんな俺に好機が巡ってきた。
外国語の講義の時間。我が目を疑った。横の席に座っているのが彼女だったのだ。
俺は、思わず声をかけた。
「君は…どこかの財閥のお嬢さんだろうか?とても品があり美しいね。 よろしければ名前をお伺いしたい。 俺は、藤田征次郎というんだ。よろしく頼むよ。」
「…っえ? お、俺ですか?」
…驚いた。 女性が 俺 だなんて。 何か深いわけがあるのだろう。 あまり詮索はしないでおこう。
「あの… 藤田って あの藤田財閥の…? 恐れ多いです。 俺なんてただの田舎者です。 偶々特待をいただけたので入学できただけで、そうでなければ到底学費など払えませんよ。 それと、藤田さん? 俺… 男ですよ?」
なんとっ。 男性だったとは。 言われてみれば、体に丸みがないがほっそりとしているのだろうとばかり思っていた。 それに特待…。 おそらく、かなりの学力があるのだろう。 興味が湧いた。
「…それは申し訳なかった! 失言を許してくれたまえ。 俺は少し君に興味が湧いたよ。 よければ友になってくれないか?」
驚いていた。 それはそうだろう。あの藤田財閥の御曹司が友になってくれと言ってきているのだから。
「…お、俺でよければぜひ! 1人で東亰に来て寂しかったんです。 色々と教えていただけませんか?」
「もちろんだ。 よく来てくれたね。こうして会えたのも縁だ。 今から少し歩いてみるか?」
こうして俺たちは、大学を後にして東亰の街を歩いた。 こうした自由な時間はいつぶりだろうか。
清々しかった。 話しているうちに分かったのだが彼は 山村之人 というらしい。小さな村から来たらしく、まるで異国に来たかのように東京の街並みに目を輝かせいた。 俺はふと、そんな之人を可愛らしいと思ってしまった。 俺はまだ之人を女性としてみてしまっているのか。情けない話だ。
之人を見ていると時間はあっという間に過ぎてしまう。 そろそろ日が暮れはじめ街は足早に帰途につき始めていた。
「そろそろ、帰ろうか。 連れ回してしまってすまなかったね。 色々と知ってもらいたかったんだ。」
「俺とても楽しかったです!征次郎さんと過ごしていると時間があっという間に過ぎてしまいました…。 それでは俺はここで失礼しますね!」
「あぁ、また明日学校で。 気をつけて帰ってくれ。 」
「征次郎さんも気をつけてくださいね!」
手を振りながら、彼は帰って行った。
彼の背中が見えなくなるまで俺は動けなかった。
俺にはまだこの時、彼に対するこの気持ちが何なのかはっきりとは分かっていなかった。
きっと女性だと思って一目惚れしていたのだから、その気持ちを引きずっているのだろうと思っていた。
この時俺はまだ この出会いが俺の人生を狂わせることになるとは思いもしなかったのだ。
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