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誘い
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入学式の日に之人と東亰の街を歩いてから、俺と之人は大学でも一緒にいるようになった。
之人は、大人しい性格の上に田舎から出て来たこともあってなかなか周りに打ち解けてないようだ。 俺以外の前で笑顔を向けているところを見たことがない。
俺にだけ向けられた笑顔だと柄にもなく胸が弾んでいた。
「あの… 征次郎さん? 良かったら今日の夜 ご飯食べに行きませんか? そんなに良いもの食べに行けないですけど…。 」
そんな誘いがかかったのは、出会ってから1年くらいたった頃だったろうか。
それまで、俺たちはただ大学で会うだけの中途半端な関係だった。
この1年間、之人と過ごしてきて 俺にとって之人との時間はかけがえのないものとなってしまった。
だから、この誘いは素直に嬉しかった。
だがその反面、俺は之人と外出するのが怖かった。 1年も経てば、一目惚れしたことなど忘れ友となれるだろうと信じていた。しかし俺は自分でも驚くべき衝動に駆られていた。
ーー之人を俺のものにしたい。
きっと共に外出してしまえば俺は、自分の想いをとめられなくなってしまうだろう。
俺は男で之人も男だ。俺はどうしてしまったのだろう。
「…ろうさん? 征次郎さん?」
ふと気がつくと之人が心配そうな顔で、みつめていた。 長い時間考え込んでしまっていたようだ。 この顔もなんともいじらしい。
「あぁ、すまない。 少し考え事をしてしまっていたようだ。 ぜひ、行こう。」
口からこぼれた言葉に自分でも驚いた。
あれだけ自分を保つために之人との距離を少しおいておいたのに…。 共に外出するのは極力控えていたのに。之人の顔を見ると、断るなんて考えられなかった。
この言葉が俺の人生の分岐点になるなんて思わなかったんだ。
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