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剥がれゆく記憶。(之人vision)
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…はぁ。 最近ため息をつくことが多くなった。
この世界は何もかもが自由で平和だ。何不自由なく生活している。
「はぁ…。 暇だな…。 会いたいな…。」
俺は、はっとする。
会いたい? 誰に?
俺は最近、体が少しだけ消えることが増えてきている。 少し前までは1秒くらいだったのだが、消える時間も長くなっている。
それに連れて次第に俺は俺じゃなくなっていくようで恐怖心を煽られる。
体が透けるのを見ると心が痛む。
この光景をどこかでみたことがある気がするのだ。 でも、俺には思い出せない。 記憶がなくなりつつあるのだ。
何か大切なことを忘れている気がしてならない。
「…何もわからない。 でも確かに、俺には大切な人がいたんだ。 誰なんだよ…。」
俺の心は壊れてしまいそうだった。
絶対に忘れてはいけない人… 忘れたくない人を忘れてしまっている気がした。
悔しい…。 俺はこれからどうなってしまうのか。
この世界でひとりぼっちになっている俺には、
思い出す術はなかった…。
時間が過ぎていくに連れて、どんどんと剥がれ落ちていく記憶。
恐怖に苛まれる日々。
俺はもう… 耐えられなかった。
そんなある日、とうとう来てしまったのだ。
転生を迎える日が。
ーーさぁ、そろそろ良いでしょう。 そなたの魂は生まれ変わるのです。 精一杯、人間界で修行をするのですよ。
「…っ誰? 俺… 生まれ変わるの? そうか…。
体が透けるのも、記憶が消えていくのも、全部生まれ変わる準備だったんですね。」
急に目の前が、真っ白になった。
ふと体が軽くなって自分の体が光の粒になっていくのを見た。
「すごい…っ。 本当に生まれ変わるんだ…。」
そんな時に、ふと1人の男の人が俺に微笑みかけているのが見えた。
「征次郎さん…!」
俺は、不意に叫んだ。 思い出した。俺の最愛の人。 なんで俺は忘れてしまっていたのだろう。
しかし、それも一瞬のことだった。
すぐに辺りは眩く輝き始め俺は意識をなくした。
ーーこうして、藤田征次郎 山村之人の2人は
お互いの人生を全うし新たな人生を歩み始めた。
消える最後の最後まで、之人を忘れなかった征次郎と記憶が失われたいった之人。
これが2人の次の人生の歯車を狂わせていくことにまだ誰も気づかなかった。
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