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どうして。(珀vision)
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俺は、朝から機嫌が良かった。
なんでかって…それは龍弥と一緒に登校できるから。 アイツは、最近いつも俺にすぐに気がついてくれる。 目で追ってたのかって言うほどに。
でも、俺はそれが嬉しくて… 嬉しかったのに!
今日、待ち合わせ場所に行けばアイツはいつものように俺を待っていた。
でも今日はいつもと違っていた。
いつもなら、俺の姿が見えた途端に犬のように俺のところに駆け寄ってくる龍弥。
でも、今日は深いため息なんてついちゃって…
俺が挨拶しても、名前呼んでも1人でぶつぶつ呟いてる。 なんなの? 他の考え事なんて… 俺がいるのに。
「おい、何無視してんだよ。」
俺は自分でも驚くほど冷たい声で龍弥に声をかけた。 案の定、アイツはめちゃくちゃ驚いてた。
ちょっとの間の後、あいつがニヤけたのはちょっと意味がわからない。
それにしてもあんなため息ついて。
聞いてみると、どうやら考え事らしい。
「何?考え事って。 なんかあるなら相談乗るけど。」
俺の言葉を聞いて、あからさまに動揺する龍弥。
…そんなに動揺するなんてそんなに俺に聞かれたくないのかよ! なんか無性にイライラした。
おかしいな。こんなに嫉妬深くなかったはずなんだけど。 びっくりするほどイライラする。
「あ、いや。別に… なんでもないんだ! 行くか。」
あぁ、ダメだ。 今 俺完全にキレた。
あからさまに動揺した上で隠すなんて…
俺に隠し事なんて… 龍弥だけは俺を信用して欲しかったのに。 俺って重いかも。 でももう無理だった。
「…俺に、言えないわけ? 龍弥のこと心配してたのに。 秘密あるんだ。 まあ、しょうがないよね、ただの友達だし。 悪いけど、俺先に行っとく。 またね。 」
…言っちゃった。 後には引けなくて、足早に学校へ向かう。 あぁ、俺のバカ! なんでアイツを困らせるようなことすんだよ! ただ…好きになってほしいだけなのに。
学校に着く頃には、俺の頬は涙で濡れていた。
自分で離れて行ったのにこんなに泣くなんて…
女々すぎだろ、俺。 こんなじゃなかったのに。
龍弥と会ってどんどん変わっていく。 俺が俺じゃなくなっていく。 それを幸せだと思えるほどにアイツに染まっていたことに今気がつくなんて遅すぎだろうか。
俺は、学校についても授業を受ける気にもならずトイレにこもって泣いた。
「ごめん…龍弥。 ただ好きになって欲しかっただけなのに。 困らせてごめんね。 好きなんだ龍弥。 俺のことはどうか…信用してほしい。」
1人こもったトイレの中で、呟くこの言葉を龍弥の前で言えたなら… こんなことにはならなかったのに。 数分前の自分が憎い。プライドなんて捨てて言ってしまえば良かったのに…。
泣き疲れて、涙も枯れてしまった俺は渋々教室に戻った。 龍弥の居ない生活は、まるで白黒テレビの中にいるようだった。
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