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chapter Ⅹ
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side 黎
「ね、このまま二人でどっか行く?」
『さっきは止めたくせに』
「はは、そうだっけ」
相変わらずスマホをいじる手は止めずに
軽口を叩く雪。
その顔は意地悪く歪んでいる。
「そろそろかな....悠」
『ん』
囁きに応じて体を起こすと、
じっとりとまとわりつく視線と敵意。
何も気づいていないふりをして歩き出す。
親子や恋人同士で来ている人が多い
ここでは殆どが一般人だ。
もっとも、人目につきやすい所で
接触を図ることはないと思うが。
人ゴミの間を通り抜けた先は、
現在修理中で本来なら関係者以外は
立入禁止区域。
選んだ理由は勿論人目を避けるため。
「あれ?ここどこだろう?」
『迷ったの?』
「あはは、そうかも」
とぼけた台詞を吐く雪に合わせて
会話を続け、獲物が掛かるのを待つ。
そして完全に包囲された所で
覗き込んでいた地図から顔を上げる。
「我々に従え。大人しくしていれば
傷は付けない」
暑苦しい黒服の男達。
鈍く光るサングラスと腰が少し膨らんでいる
のは警棒かチャカか。
「えっと、誰、ですか?」
「質問は認めない。抵抗すれば多少の
痛い目は見てもらう」
理不尽極まりない。が、
犯罪者に理屈など通用しないものだ。
じりじり距離を詰めてくる黒服達。
余計に暑苦しいし鬱陶しい。
同時に隣から冷気が漂い始めた。
絶対零度の殺気。
「てきとーに殺っていいよね?」
『遊んでやれ』
「りょーかい」
お互いに背を向け、同時に踏み出す。
伸ばされていた手を掴んで密集地に
背負い投げれば三人脱落。
背後からも同様の悲鳴。
「こ、このガキ共っ!」
「やっちまえ!」
「多少なら腕の一本や二本構わねぇ!」
数秒間呆然としていたが我に返った途端
怒りに顔を染めて殴りかかってきた。
横から来た奴の懐に入り込んで
肘を鳩尾に叩き込みつつ足払いをかける。
「なぁっ!?ヴッ、」
背後からの風を切る音に反射的に
体を横にずらすとガンッと鈍い音。
ガキ相手に物を使うとは....程度が知れた。
『はぁ....』
「調子に乗るなよっ」
次いで横凪ぎに飛んできたのを
跳びこえ着地と同時に蹴り上げる。
「ぐあぁっ!」
カランッと地面に落ちた警棒を蹴り飛ばし
手を押さえて呻く黒服の背に踵落とし。
くつ越しに背骨が折れた感触。
自業自得だ。
残りは二人。雪の方も後三人。
時間だ。後はひたすら回避に徹する。
雪は最早からかっているだけだ。
「くそっ、こんなはずじゃあ.....」
「ガキ相手に何手間取ってんだ!」
ここでようやく黒服達に焦りの色が見えた。
当然だろう。当初の予定では
さっさと俺達を拘束して
あいつらを脅す予定だったのだから。
『ぅあ゛っ』
「冬季くんっ!悠季くんっ!」
「くそっ、無事か!?」
待ち人は、わざと俺が攻撃を受けたふりで
後ろに飛んで勢いを殺し膝つき、
雪がよろめいた所で現れた....
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