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俺の声を聞け 10
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「…………は?」
カナは目を丸くしたまま立ち尽くし、その場を沈黙と重たい空気が漂う。
「だから俺が千秋だって言ってんだよ。呼ばれたから来てやったんだ! 修平は返してもらう。貸した覚えもないけどな!」
「……えっ? あなた……男でしょ?」
「なんなら学生証見せるか⁉︎」
やっと思考がついてきたのか、カナは口をパクパクさせながら俺と修平を交互に見た。
「だってこないだは女だったじゃない!」
「俺だって好きであんな格好してたわけじゃねぇ! つか、こんな言葉遣いなのにいつまでも女って信じてるお前もどうかしてると思うぞ」
するとカナの周りにいた男たちも戸惑いを隠せずざわつき始めた。
「え? チアキって男なの!? 俺、男とか無理なんだけど」
「つか、カナのやつ男と女間違えるとかありえなくね? つか、男に寝取られたのかよ」
すると半狂乱のカナの怒りの矛先は修平に向かって行った。
「何なのよ! からかってたわけ!?」
すると修平はゆっくり顔を上げてため息を付き、かぶりを振る。
そして俺を見るなり目を細め、すごく悲しげな顔をしながら呟くように言ったんだ。
「……来るなって言ったのになんで来たんだよ」
修平はぐったりしてはいたが、まっすぐに俺を見ていた。
そんな修平の表情を目の当たりにしたカナは体を震わせながら声をあげる。
「なに言ってんのよ! 男同士で付き合うですって? あの修平が? 信じられないわ! 証拠を見せなさいよ」
証拠と言われても、なにが証拠なんだ?
「どうしたら信じるんだ?」
「そうね、キスしたら信じてあげるわ」
ふーん、キスか……。そんなの簡単。
俺は修平に近付いて修平の顎を持ち上げる。
そして躊躇なく唇を合わせてキスをした。
こんな状況だっていうのに、久しぶりのキスがちょっと嬉しくて出血大サービスで舌まで絡めてやると、また周りがざわついた。
「ちょ、ちょっと……な、何よ! ……マ、マジ!?」
「うわー、マジでホモだ。ガチじゃん」
カナが怒りで震えながら立っている横で男たちが声を上げている。
俺はお前が言う証拠を見せて話し合いに来てやったんだ。
話し合おうじゃないか。
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