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油谷さん 1
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住込み家政婦の藍川が遅めの夏休みとして、1週間綾倉家を不在にする間、通いで家政婦を頼むことになった。
10時から16時の間、掃除と洗濯、浅黄の朝食兼昼食の準備などをしてもらう。
初日の月曜日、大まかなことは藤原から説明し、細かいことはもう一人の家政婦水野が説明した。
「少し、お話してもいいでしょうか」
火曜日、水野は大奥様にお茶を入れると、遠慮がちに声をかけた。
遠慮がちではあったが、聞いてほしくてたまらない様子だった。
「何かしら」
「藍川さんの代わりにきのうからきている油谷さんのことなんですけど…」
水野の話では、油谷は何でも細かすぎるとのことだった。
例えば、洗濯物を干すときは向きや順番を揃えるべきだとか、食器の置き方もこうするべきだとか、いちいちうるさくて仕方ない。
この家にはこの家のやり方があると言っても、より良い方法があるなら変えるべきだと引かない。
「あまり言い争ってもよくないと思って、適当に話を合わせましたけど、疲れちゃいますよ」
「そうね、でも、今週いっぱいのことだから我慢してちょうだい」
家政婦紹介所の話では、油谷は几帳面な性格だということだったので、何かと大雑把な水野とは合わないのだろう。
水野にも言ったとおり、今週一週間のことなので、大きな問題ではない。
翌日、綾倉は家に帰ると、誰もいないと思いきや、居間で母親が待っていた。
家政婦は二人ともすでに帰っているし、浅黄は休みで友人と飲みに行っているので、今は親子二人きりだ。
そんなことは珍しいことだと綾倉は考えていた。
「何かありましたか?」
「大したことじゃないの。
今日、水野が私に話したことが気になって」
綾倉はウィスキーをグラスに注ぐと、母親に渡した。
彼女は一口飲むと話を続けた。
「藍川の代わりに来ている家政婦が、昼間、グラスをいくつか割ったらしいの。
それを、浅黄に片づけさせたって」
「なぜ、浅黄に?」
「それがわからないのよ。
油谷は浅黄の横に立って見ていたって言うだけで、よくわからなくて」
「浅黄かその家政婦には聞かなかったんですか?」
「その時には、二人とももう家にはいなかったので聞けなかったわ。
だから、今日、浅黄が帰ってきたら聞いてちょうだい。
あなたにだったら、何があったとしても正直に言うでしょう」
「わかりました。
ただし、私が寝る前に彼が帰ってきたらですけど」
「あなたが寝る前に帰ってこないことがあるの?」
「まれに」
綾倉の母は、それは意外だという顔をした後、明日の朝、顔を出すと言って離れへ帰っていった。
浅黄は23時過ぎに帰ってきた。
綾倉はベッドの中で本を読みながら、浅黄を待っていた。
「昼間、家政婦に割れたグラスを片付けさせられたんだって?」
「片付けさせられたわけじゃないよ。
ガラスが割れた音がして、見に行ったら、二人が言い争ってて危なそうだったから、片付けたんだ」
「何を言い争ってたんだ?」
「わかんない。
でも、あの二人はうまくいってないみたいだね」
「そうなのか?」
「綾倉さんは家にいない時間だから知らないかもしれないけど、二人が一緒の部屋にいると、空気がぎすぎすしてるよ。
でも、まあ、あと2日だし」
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