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紅葉の季節 4
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夕方、藤原の電話が鳴ったのは、綾倉がオフィスを出るのを見送った直後だった。
発信者の名前を見て、興奮気味に電話に出た。
「藤原です。ご無沙汰しています」
「覚えていてくれたんだね、嬉しいよ」
「当たり前です。今でも時々、あなたのことを思い出します」
「それは、彼と僕の話をするってことかな?」
電話の相手、謙一郎の言う「彼」とは綾倉のことだ。
「残念ながら、そういうわけではありません。
でも、あなたとの関係が続いていれば、と思うことが良くあって・・・」
「もう、10年も前の話だよ」
謙一郎は笑った。
「でも、あなたと別れてから、あの方はちゃんとした恋愛をしなくなってしまったので」
「ちゃんとしてない恋愛ってどういう恋愛だい?」
謙一郎は藤原をからかうように聞いた。
「普通の恋愛ではなく、若い相手をお金で買ってって感じで・・・」
「いいの?そんなことばらして。彼に怒られない?」
「そうですね。
でも、そんなことをしてるのは、あなたのことを忘れられないからじゃないかと思っています」
「それはどうかなあ」
「間違いなく、別れてすぐの頃はそうだったと思いますよ」
「やっぱり、10年前の話だよね」
そう言って、謙一郎は笑った。
「で、今日お電話をくださったのは?」
「実は、先月、ようやく日本に戻されてね。
友人たちに連絡しては旧交を温めてるんだけど、なかなか、彼に連絡する勇気が出なくてね。
それで、君に電話してみたんだ。
直接断られるよりも、君を介した方がショックが小さいかなって。
彼も、その方が断りやすいだろ」
「なんで、断られるって決めつけてるんですか」
「決めつけてるわけじゃないよ。
これだけ時間が経過していれば、お互い気まずい思いもしないだろうと思うしね。
で、今夜、彼の予定は?」
「クラシックのコンサートへ行くとおっしゃってました」
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