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紅葉の季節 11
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仕事が終わり、家に帰って、シャワーを浴び、寝室の前に立った時、浅黄はドアを開けるのを一瞬ためらった。
乗馬に行った二人は泊まってくるかもしれないと言っていた。
誰も寝ていないベッドを見るのが怖かった。
勇気を振り絞ってドアを開けると、部屋の明かりがついていて、綾倉がベッドで上半身を起こしていた。
昨日の夜は、二人で泊まったわけではないということだ。
「おかえり。寒かっただろ。
今朝は今シーズンで1番冷え込むって言ってたぞ」
浅黄が入ってきたのを見て、綾倉が言った。
「起きてたんだ?」
「早起きしてお前を待ってた」
「なんで?」
こんな早朝に別れ話をされるのかと、浅黄は身構えた。
カウンターでうつむいていた野口の姿が頭をよぎった。
「休みにもかかわらず早起きしたのに、意外と喜ばないんだな」
綾倉は少し不満げだった。
と言うことは、今、別れるという話をされるのではなさそうだと思いながらベッドに入った。
「昨日は泊まってくるのかと思ってた」
横になり、綾倉に背を向けながら言った。
「ああ、そうか。そんなことを気にしてたのか」
「べつに」
「うそつけ。気にしてるくせに」
「だから、してないって」
「気にしてますって顔に書いてあるぞ」
浅黄は怒りがこみあげてきて、綾倉の方を振り返った。
「そうだよ。気にしてるよ。
7年も付き合ってた相手と、二人で泊まってくるかもしれないって言われたんだぜ」
「7年付き合ってたって、良く知ってるな」
「藤原さんが言ってたよ。
趣味も合って、すごい仲良かったって」
「そうだな。あの頃は、二人、ずっと一緒にいると思ってた。
あいつはちょっと特別な存在だった。
だから、きのう、久しぶりに馬に乗りに行こうと誘われ時は、断れなかった」
「あ、そう」
浅黄は再び綾倉に背中を向けた。
そういうことを俺に言うかよと、浅黄はさらに腹が立った。
「あいつから、若い子との遊びは終わりにして、ちゃんとした恋愛をしようと誘われた」
これ以上、彼の話は聞きたくなかった。
綾倉が再び何かしゃべり始めたら、「疲れてるから寝る」と遮ろうと思った。
その時、後ろから綾倉に抱きしめられた。
「今、ちゃんとした恋愛をしてるって答えた」
そう言うと、綾倉は浅黄の頭、そして、肩にキスをした。
浅黄は綾倉の方を向いた。
「あの人は特別な存在なのに?」
「それは10年も前の話だ。
今は、それぞれ、別の道を歩んでいる。
私にはお前がいる」
そう言うと、綾倉は浅黄を強く抱きしめ、続けた。
「私にとって、お前の存在はあいつ以上だ。
今の私は、お前なしでは生きていけない」
「本当に?」
浅黄は綾倉の言葉を夢のような思いで聞いていた。
綾倉は浅黄を少し離して、浅黄の顔を見た。
「不本意ながらな。
それなのに、あいつのことを心配するなんて、お前は馬鹿だな」
もう少しいい気分でいたかったが、いつもの綾倉に戻ってしまった。
「馬鹿なのは綾倉さんだよ」
今回のことで、責められるべきは自分ではなく、綾倉だと思った。
「そうかもしれないな、色々な意味で」
そう言って小さく笑うと、浅黄にキスをした。
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