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好きなのに③
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合宿が終わり、帰りのバスも、帰り道も、ハルと悠斗は言葉を交わさなかった。
ハルの顔を時々盗み見ると今にも泣きそうな顔をしていて、それでも、悠斗からハルに話しかけることはなかった。
ハルと仲直りできたって、親友としてだけだ。
それ以上距離が縮まることはない。
そんなことわかってたはずなのに。
合宿に行くまでは、それで満足してたのに。
これ以上なんて求めなかったのに。
翌日も、翌々日も、練習はあったがハルと悠斗は挨拶も交わさなかった。
周りから見ても分かるほど2人はお互いに距離を取っていた。
「滝瀬」
短く呼んだ声は、九条のものだった。
「明日は土曜の午前練習だ。午後は空いているな?」
"忠実なイヌは主人が呼べば来る…そうだな?"
九条の視線は言外にそう物語っていた。
「…はい」
ハルとケンカして話もできない状態でも、ハルへの想いは変わらない。
俺はハルを好きでいられるだけで十分だ。
俺の気持ちがハルに知れたら、それすら叶わなくなってしまう。
もう悠斗の心には、九条のイヌでいることがハルを好きである証だと、捻じ曲がった倫理観が植えつけられていた。
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