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リクエスト① 2
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結局その日は適当に続きの買い物を済ませ、夜になって普通に眠りについた。
体調は全くといっていいほど何ともなく、安心して俺は昼間の出来事の口を噤んだ。
そうして翌朝。
「翼ーっ?!」
少しおどろいたたような、どこか慌てたような呼び声が聞こえて、おれはぼんやりと目をさました。
「んっ、おはよぉ」
ニコッと向けたえがおの前に、きれいな顔をした男の人がいた。
「えーと、ひみやさん」
この人しってる。おれと、いっしょに住んでいる人。
にぱっと笑って見せたら、とたんに火宮のまゆが寄った。
「夢か」
「どうしたの?まだおねむ?」
「現実だとしたら、俺は気でもふれたか」
クッ、と小さくうめきながら、火宮がまゆの間をおさえている。
「おまえは、翼、だよな?」
「え?うん。つばさだよー?」
なにゆってるのかな。
「俺の知っている翼とは、随分違うようだが…」
ペタペタと、顔からからだじゅうをさわられ、おれはくすぐったさにムズムズうごいた。
「やだー。くすぐったいよー」
「どうやら本物のようだが…とりあえず医者を呼ぶか」
はぁぁっとためいきをついた火宮がめまいをこらえるみたいな顔をしてる。
「おいしゃさん?どこか悪いの?」
おれは元気だけど…。
コテンと首をかしげたら、火宮が疲れたみたいに小さく笑った。
「俺の頭がおかしくなったんじゃなければ、おまえの身体がどうかしたな」
「ふーん?」
よくわからないけど、まぁいっか。
「ひみやさん。好きー」
ピョンとベッドの上から飛び上がり、火宮にガバッと抱きついた。
「翼っ…」
ガシッとおれを抱きとめてくれた火宮が、目を丸くしてる。
何でだったか忘れたけど、おれはこの人が大好き。
「はぁっ、落ち着け…」
それはおれに言ったのか、火宮が自分に言い聞かせたのか、いまいちよく分からなかった。
「…それで、朝起きられたら、幼児化していたと」
お人形さんみたいに冷たくてきれいな顔が、おれをジーッと見つめてきた。
「こわい…」
なんだかにらまれているような気がして、おれは火宮のからだの影にそっと隠れた。
ぎゅう、とつかんだ火宮の服のすそが、手の中でクシャクシャになる。
「はぁっ、突然電話で、翼がガキになったから、今日の予定は全てキャンセル、仕事も休むと言われたときにはどうしたかと思いましたが、これは…」
「だろう?一応医者も呼んだが、原因不明だ」
チラッとおれを見下ろした火宮の顔が苦笑している。
「ひみやさん?おれ、わるい子?」
なんだか火宮を困らせているような気がして、おれはひっしで火宮にしがみついた。
「ッ…」
「会長。その弛みきった顔…。顔面崩壊していますよ」
「……これを見て、クールでいられるおまえの気がしれない」
可愛すぎるだろう?と呟いている火宮の手が、ポンポンと頭にのった。
「いい子?」
「あぁ、いい子だ」
ニコリとほほえまれて、ホッとした。
「意外ですね。会長はてっきり子どもはお好きではないかと」
「ふっ、ガキなんざ嫌いだな。あんな得体の知れないもの」
「ですが…」
「『翼』は別だ。ガキだろうが大人だろうが、男だろうが女だろうが、翼というだけでなんだって構わない」
ふわっと火宮の回りにわき立つ、あったかい想いが気持ちよかった。
「そうですか…。ですがこのまま、というわけにも参りませんよね?」
「あぁ。これでは抱けないからな。それは非常に困ったな」
「あなたは…」
はぁっとためいきをついた、そうだ、火宮の部下さんの真鍋さん。
冷たい顔と、冷たい目が、ジッとおれを見つめてきた。
「とりあえず、原因究明に尽力致します。翼さん、昨日から今朝まで、何か不審な食べ物、または飲み物を口にしていませんか?」
「し、しらない」
「おい、真鍋。あまり怯えさせるな」
冷たい顔がいやで、ぎゅーっと強く火宮につかまったら、火宮は優しくおれをかばってくれた。
「ですが…すみません。では、どこかに強く頭をぶつけたり、何か衝撃を受けたりは…」
「そんなんで、まぁ性格や記憶はともかく、身体まで縮むものか」
ドラマやアニメじゃあるまいし、と小馬鹿にする笑い声が響く。
「それはそうですが…。仕方がないですね。昨日の昼間は、確か浜崎と一緒だったはずですね。そちらから探ってみます」
「あぁ、頼んだ」
火宮さんたちがお話ししてて…どうしよう、トイレに行きたくなって来ちゃった。
「ん?翼?どうした」
モジモジしたおれに気付いてくれたのか。
「あのね、おしっこ」
「……」
「会長!顔っ!」
「ん?あぁ、ククッ…。これは、これは」
せっかくのきれいな火宮の顔が、なんかだらしない。
「はぁっ、一刻も早く、原因を究明して、元に戻れるよう手配します」
「あぁ。…それにしても、みたところ、4、5歳か?5、6歳?おまえは1人でトイレができるのか?」
「うん。おれ、できるよー!」
にっ、と笑ってうなずいたおれに、火宮の少しざんねんそうな顔が向いた。
「だから会長…」
「ククッ、ほら、トイレはこっちだ」
来い、といいながら、火宮がおくのドアにつれていってくれた。
「はぁぁっ、これは早いところ、どうにか対策しないと。会長の理性が切れられる前に…。それにこの会長は…誰にも見せられないな」
私も見たくない、とためいきをついている真鍋が、ペコンとおじぎしているのが、チラッと見えた。
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