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弔いの花が散る4 *
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*残酷、暴力描写有り。
苦手な方はご注意下さい。
ポタリ、ポタリと、赤というよりは黒に近い少し粘ついた液体が指先から地面に滴る。
「うぅ」とか「あぁ…」とか、小さく上がる呻き声が、まだそいつらに息があることを教えてくれる。
「詫びろ…。おまえら全員、命に代えて、聖に詫びろ!」
腹の底から湧き上がるドス黒い感情を、火宮はセーブすることができなかった。
グシャリと踏み潰された男の手から、ジワリとまた血が滲み出す。
その腕は人体としてあり得ない方向に曲がり、ヒューヒューと微かに上がる吐息はもう悲鳴にもならない。
「クソッ。クソォォーッ!」
その慟哭を、その嘆きを、一体誰が止められるだろう。
血濡れの拳を握り締め、火宮は1人、暗闇の中で叫び続ける。
同じ頃。
こちらはやいばを握った震える手を、必死に宥めながら涙を流す男がいた。
「だから言ったんだ。火宮は駄目だって。あいつだけはやめておけって…」
ブルブル震える手を握り締め、取り落としそうになる果物ナイフを必死で留める。
「天束…。天束、なんでっ…」
カラーン、とナイフが床に滑り落ちる。
頭を抱えた藤城が、ガクンと膝を折って床に蹲った。
見渡す限り、黒、黒、黒。
喪服と制服が入り乱れ、上がるは哀しみの泣き声ばかり。
藤城は、生徒会長として、また聖の近しい友人として葬儀に参列していた。
キョロキョロと辺りを見回した目に、火宮の姿は見つからない。
同じ制服がいくらあったとしても、あの容姿と存在感を見落とすはずはないというのに。
『来ないつもりか?火宮刃…』
読経が進み、焼香が終わっても、火宮の姿はどこにも見られなかった。
『はっ、なんで天束は。葬儀にも来ないような薄情者を…』
火宮に関わりさえしなければ、聖が命を落とすことはなかったのにと、藤城は悔やむ。
『もっと強く止めていれば。強引にでも引き離していれば』
聖は死なずに済んだのに。
哀しみの嗚咽に混ざって、深い悔恨が胸を刺す。
「っ…?」
ふと、火葬場への出棺に続く葬列の向こうに、深い闇色をした男を見つけた気がした。
藤城が見間違えるはずもない、憎きライバルの佇む姿。
じっと棺を睨み据え、遠くから1人、聖を見送る火宮の姿だ。
パァァァーッと、長く続く霊柩車のクラクションの音が響き渡る。
手を合わせてそれを見送っていた人たちが、1人、また1人と動き出す。
火宮の足もまた、ふいっと踵を返したのが見えて、藤城は反射的に駆け出していた。
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