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リクエスト④ ご機嫌ナナメ 3
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シーンと一瞬声が止んだ。
え?と思ってそろそろと耳から手を離したら、火宮と真鍋の会話がドア越しに聞こえてきた。
「はぁっ、真鍋。とりあえずケーキでも買って来い」
「そうですね。どういったものがお好みでしょうか」
ドンッ!
そんなの要らない、っていうつもりでドアを叩いたら、深い溜息が2つ聞こえた。
「いらないか…。ならばそうだな、特上寿司あたりは」
「新作ゲームなどの方が、ご機嫌を直していただけるかもしれません」
ドンッ、ドンッ!
だから、そんなのどっちも要らないんだって。
あーぁ、でもなんか、あの2人が俺の機嫌を直そうと必死なのは笑えてくるな。
「翼、どうしたら出て来てくれる?」
「翼さん、何でもいたしますので、どうかここをお開け下さい」
へぇ、すごい。
真鍋がそこまで言うとか、珍しくない?
俺は怒っていたのも忘れて、だんだんと2人の必死さが楽しくてたまらなくなってきていた。
このまま篭って黙っていたら、どこまでするかな、この人たち…。
ワクワクと悪戯な気持ちが湧いて、俺はぶすっとした振りをしたまま黙り込んでいた。
「翼、開けてくれ」
「翼さん、どうかお開け下さい」
懇願、にはまだ遠いね。
さぁどうする?
土下座でもしてみせるかな。
まぁされても見えないのは残念だけど。
「翼」
「翼さん」
どんな顔してる?
困ってる?情けない顔してる?
あぁ見たい、と思いながら黙っていたら、何故かドアの向こうの2人も黙ってしまった。
あれ…?
どうしたんだろう。
気配はあるから、ネタ切れで考え中?
このときまさか、2人がニヤリと顔を見合わせて、企み顔をしていたなんて、脱衣所内で籠城を決め込んでいる俺は知ることは出来ずに。
呑気に次はどんな手を使ってくるか、楽しみに待っていたら…。
「翼、ドアから離れていろよ」
「え…?」
何?と考える間もなく、本能的に感じた危機と嫌な予感に、咄嗟にバタバタと這いずって脱衣所の奥に向かった瞬間。
バァンッ!と派手な音を立てて、脱衣所のドアが抜けた。
「なっ…蹴っ…」
片足が上がった火宮が見えたことから、どうやらドアを蹴り開けたようで。
壮絶に妖しい笑みを浮かべた火宮と目が合って、ひっ、と引きつった悲鳴が漏れた。
「おまえ、俺たちがここまで言っているのに、いつまで拗ねている」
「っ…」
ズンズンと近づいてきた火宮に、腕を掴まれ引きずり立たされる。
「しかも途中からおまえ、面白がっていただろう?」
「え…」
なんでバレた。
「ほくそ笑んでいる気配が分からないとでも思ったか」
「っ…」
分かるわけないでしょ、普通…。
チラリと見た火宮はニヤリと勝ち誇ったような笑みを浮かべていて。
「っ!」
そうだこの人、『普通』じゃないんだった…。
今更思い出しても後の祭り。
やらかしたことに気がついて、全身からザァッと血の気が引く。
「ふっ、初めのうちで手を打っておけばよかったな」
「あ、う、そのっ…」
「クッ、真鍋、捕まえておけ」
まるで猫の子を放るように、ポイッと投げ渡された俺の身体を、絶対零度より低く冷たい笑みを浮かべた真鍋が受け止める。
「ひっ…。嫌だっ、やだっ」
やばい、やばい、やばいー。
この人危険、と本能的に悟って咄嗟に逃げようと暴れた身体が、ひょいっと小脇に抱えられた。
「え?」
っ!
「お暴れになってこれ以上お手数をおかけになりませんよう」
バシバシバシッと、真鍋の横に突き出たお尻を連続して引っ叩かれた。
「ひぃーん、痛いーっ」
「お仕置きですよ」
「やだっ、やだぁ」
どうにか逃げたくて、身体が反射的にバタバタともがいてしまう。
「まだ足りませんか?」
「っ!」
スッと振り上がった手が見えて、やばい、暴れるとぶたれる!と学習した俺は、ピタリと抵抗をやめて、ブンブンと首を振った。
「ククッ、それくらいにしておいてやれ」
あぁ火宮様、やっぱりあなたは俺の味方…
「これから本格的な仕置きだ。始めから泣かしてはつまらん」
…じゃなかった!
「いやだーっ」
仕置きって何。
なんでこうなるの。
そもそも怒っていたのは俺なのにっ。
いつの間にか形成逆転していることに、俺はとにかく焦った。
けれどもその叫びも虚しく…。
一旦寝室に入って行った火宮が、手にいくつかの道具を持って戻ってきた。
「っ、それ…」
リングとローションと小型ローター。
あぁ、本当にお仕置きだ、と分かった俺は、もうそれだけで泣きそうだった。
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