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リクエスト14 媚薬 2
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その夜。
帰宅した火宮は、しっかり俺の目論見通り、ブランデーを注いだグラスを持って、リビングに出てきた。
カラン、と氷が鳴った音に、俺は風呂上がりで濡れた髪を拭きながら、ソファから火宮を振り返った。
「えへへ。お疲れ様です」
やばい。つい顔がにやけてしまう。
うっかり緩む顔を誤魔化しながら、俺は火宮が持ったブランデーグラスから、そっと視線を外した。
「あぁ。おまえはもう風呂に入ったのか」
髪、ちゃんと乾かせよ、と笑いながら、火宮が斜め向かいのソファに座る。
悠然と足を組んで、ゆったりとグラスを傾ける姿は、本当、大人の色気たっぷりの格好良さだ。
ふふ、それがどんな風にみっともなく崩れるのかな。
火宮の反応を期待しながら、コクンと上下する喉を見つめる。
「翼?」
あまりに食い気味で見つめてしまったか。
火宮の目が不審そうに俺に向けられた。
「えっ?あ、な、なんですか?」
やばい。声が微妙に裏返った。
ジーッと値踏みするように、火宮の目が俺を見る。
「っ…」
な、なに…。
内心は冷や汗ダラダラだったけど、俺は必死で平然とした振りを続ける。
そんな俺をひとしきり観察していた火宮の眉がキュッと寄って、その目がスゥッと手の中のグラスに移動した。
っ…。バレたか?
ドキン、ドキンと鼓動がうるさく音を立てる中、不審そうにグラスを眺めた火宮が、クン、とその匂いを嗅いでから、舐めるようにピチャリとブランデーを一口含んだ。
「………」
「ひ、火宮さん?」
無臭なことは確認済みなんだけど、まさか気づいたんだろうか。
ゆっくりと持ち上がっていく頬に、つられて口角を上げる口元の意味はなんなのか。
「ふぅん」
意味深に呟き、薄っすらと目を細めた火宮が、コトンとグラスをテーブルに置いて立ち上がった。
「火宮さん?」
突然の行動が理解できない俺を置いて、火宮がスタスタとキッチンに向かう。
カタンと開いた音がする扉は、グラスを収納してある場所のものか。
「なるほどな」
ポツリとした、低く艶のある火宮の呟きが聞こえてきて、ゾクリと背筋が冷えた。
「っ…」
「1瓶全部入れたか?」
ここにあったはずの小瓶がない、と言いながら、火宮がリビングに戻ってくる。
その目はギラリと欲情に揺れ、ズボンの前が少々キツそうに膨らんでいた。
「こんな悪さをして」
「っ、お、れは、なにも…」
知らない、と続けようとした声は、火宮の妖しく艶やかな笑みに気圧されて、途切れてしまった。
「中身がなんなのか、知ってのことか?」
「っ、な、んの、話です…」
「クックッ、もしも毒だったらどうする」
ツゥッ、と目を細めて、ゾクッとするような流し目を向けてくる火宮に、ズクンと腰が痺れた。
「っ、そんなはずはっ」
あれは絶対に媚薬の瓶だし、現に火宮は色欲を煽られているのではないのか。
「そんなはず?」
「だってどう考えたって媚薬…」
そこまで口走ったところでハッとした。
やば…。
「ほぉ?」
気づいたときにはもう、火宮の顔がニヤリと意地悪く歪んでいて、クイッと顎に掛かった手に上向かされた顔が、冷たく鋭く尖った火宮の視線に晒されていた。
「っ…」
「やはりおまえが混入させたわけだ」
「っぁー」
バレた。
っていうか、うっかり自白させられた。
「ククッ、俺に媚薬入りの酒など飲ませて。どうしたかった」
「それは…」
「俺の理性のタガを外したら、どうなるか想像できなかったわけではあるまい」
いや、できなかった。
できなかったというか、そんなこと、考えすらしなかった。
「俺は、俺はただ…」
「ククッ、たまには容赦なく責められてみたかったか?おまえもなかなか好き者だな」
ギラリと欲望を光らせる火宮の瞳に射竦められて、俺は今更ながらに自分が何をやらかしてしまったのかに気がついた。
「違っ…そんなつもりじゃ。ただ俺は、火宮さんが薬で浮かされて乱れて悶えちゃったりするところが見れたら…」
って、違う。
それも暴露したらやばいんだった!
気づいたときにはすでにその言葉は口から離れていった後で。
「ほぉぉぉ?おまえはそんな悪巧みをしていたのか。これは…」
「ひっ…」
「たっぷりと仕置きだな。嫌と言うほど…いや、嫌と言っても啼かせてやる」
そんなっ!あぁ俺、これ死んだ。
「俺に媚薬を盛ったのはおまえだ。責任を持って、俺の熱が収まるまで、とことんまで可愛がられろ」
待ってそれ。あなたの可愛がるは、苛めると同義語じゃ…。
「俺に媚薬を盛ったんだ。手加減などは期待するなよ」
ニヤリと笑った火宮の顔は、あまりに妖艶で美しく。
っ…喰われる。
その色香に惑わされて、気を抜けば一瞬で骨の髄まで喰らい尽くされてしまいそうな。本能を剥き出しにした野獣のような淫らさに、俺の身体はたまらず痺れた。
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