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【たこぱ】
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夏休みに入り三日経った今日、俺はえるの家に遊びに来ている。
正直お昼の時間がない夏休み期間はえると会えないと思っていた。講習はあったが、三年生は希望者のみらしく強制ではないので朝が弱く勉強の嫌いなえるは当然参加するはずもなかった。
学校にすら来ないのであれば遊びに行くしか会える機会が無い。寂しすぎて本気で死ぬかと思った。
LINEでは毎日遅くまで会話しているがやっぱり会えないのは寂しい。…そこで俺はえるが卒業してしまうところまで想像してしまった。
…やめよ。
虚しくなっただけだった。悲しい妄想で埋まってしまった頭を振り、何とか暗い考えを止める。今はまだ考えなくてもいい。どうせ悲しくなるだけだ。深く考えず今の楽しい時間を噛み締めなくては、、と、再びLINEに目を落とす。
えるは暇な夏休みを映画を借りて過ごすことにしたらしい。前から聞いていたが、えるはかなりの映画好きだ。
俺はと言うと芸能人に疎いため映画などもあまり見る機会がない。だから映画ネタを言われても正直上手く乗れないのが現状だ。えるのためにも見ようとは思うのだが、生憎借りようにもどれが面白いものなのかが分からない。
だから借りてきた映画を一緒に見ないかと誘われた時は本当に嬉しかった。借りてきたものもホラーやグロ、ミステリー系でどれも俺の好きなジャンルだったし、何よりも夏休み期間もえると会えると思うと、心が踊った。
そんなことを考えていると、唐突にえるは話を変えた。まぁ、えるが急に話を変えることはよくあるので特に気にもせず答える。
〈お前たこ焼き食いたい?〉
〈めっちゃ好き。〉
〈知ってるわ。食うかどうか聞いてんだよ。〉
〈食べたい!〉
〈じゃあ映画見るついでにたこパするか。〉
〈…他に人は?〉
〈はぁ?お前俺に友達いると思うか?〉
〈…。( ˙꒳˙ )〉
と、まぁこんな感じで二人でたこパまですることになった。…ふたりで。ふ・た・り・で!やばい。正直めちゃくちゃ嬉しい!叫びたいくらいだ。心の中でえる大好きィ!!!と叫び、多少話した後その日は眠りについた。
そして今。
えるの家に来た俺はえると一緒にキッチンでたこ焼きの元を作っている。
中の具もタコだけでなくチーズやウインナーなども入れるらしい。手際よく具材を切るえるはいつ見ても可憐だ。
「少しずつ掻き混ぜてけよ?」
「はーい!」
言われた通りたこ焼きの元をかき混ぜてる俺の隣で何やら別のものも作り始めたえる。どうやら今日の夜ご飯もついでに作ってるらしい。
みんなもご存知かと思うが、えるは料理が上手だ。
お昼のお弁当も含め、えるの作った手料理はとても美味しい。
俺も一応料理は作れるが、味は平々凡々だ。一人暮らしをしてるため一通りは作れるつもりだが、えるとは比べられない程の実力の無さである。
一通り野菜などを切り終わったえるは手を洗い、何やら隣の部屋に置いてあった掃除機を手にし「二階の部屋掃除してくるからかき混ぜてろ。」と言い、二階に上がっていった。
一人残された俺は言われた通りかき混ぜ続けた。ある程度混ぜたので、えるを呼びに二階へ行った。掃除機をかけていたえるに俺は終わったこと伝えると、何やら考えたように上を向き、掃除機を渡した。そして「バトンタッチ」と言いながら、すぐに下へ降りてしまった。
…え。これは俺が片付けろってこと?
えるがどこまで掃除したのか分からないので一通りもう一度掃除機をかけ、コロコロで仕上げをし、テーブルなどを拭いていたら下からえるの声が聞こえた。
「出来たから降りてこい。」
「はーい!」
返事をし、その場へ向かうと階段を降りる途中でたこ焼きに使う道具を次々と渡された。たこ焼きの元、調味料、お皿等など...階段の途中で受け取り二階に持っていく。言わばリレー形式だった。
「あっ、かつお節忘れた...」
最後にたこ焼き機を持ってきたえるはそれも俺に渡し、キッチンへと降りていった。
「じゃあ焼くかぁ」
ジュワァ...とお腹の空くようないい音が聞こえたかと思うと、周りからふつふつと焼き色が付いていく。
「せき、ほら早くタコ入れろ。」
「えっ、あ!はい!」
そんな様子をついつい夢中で見入ってしまい、完全に忘れていた。急いでタコを順々に入れていく。
ぽちゃ、ぽちゃ...
タコ、タコ、チーズ、ウインナー...
タコを中心にまんべんなく入れていく。
たこ焼きの生地に吸い込まれていく具材達を見るのは初めてで、なんだか面白かった。
くるくる...と、手際よくひっくり返しているえるの手先をじっと見つめていると、
「せきもやってみるか?」
と、ニヤニヤしながらピックを渡された。
どーせ俺には出来ないだろうと嘲笑っているのだろうが、残念ながら俺の目線からは上目遣いで頼んでる天使にしか見えない。
「えぇ〜?俺出来ないよぉ(笑)」
「だからやらせるんだろ...何笑ってるんだよ。」
気持ち悪いな、と罵倒を喰らいながらピックを渡すえる。
ちなみに俺は出来ない。
まぁたこ焼きを焼いてるとこを見るのが初めてだって言った時点で分かると思うけど本当にやったことがない。ピックの使い方なんて分かるわけもなかった。
えるのやっていたようにまわりからクルッと回していく...
が、失敗する。
「やべぇwww」
えるは爆笑している。
うるさいなぁ!やったことないって言ってるだろぉ!?
心の中で反論しながらも、焦がしては元も子もないのでガムシャラにひっくり返す。
「よっ、ほっ、!」
「よwwwほwww」
必死にひっくり返しながら漏れ出す無意識の声をオウム返ししては笑ってるえる。えぇい、いつまで馬鹿にしたら気が済むんだ!
「そー怒るなって(笑)…うん、案外上手いよ。」
「えっ!本当!?」
初めてにしては上手い方、とぶっきらぼうに褒めてくれるえる。俺はえるのこういう所本当に好きだ。嬉しい。
仕上げはえるが上手く形を整え、カバーしてくれた。完成したたこ焼きはとても美味しそうに湯気を立てていた。
「食べよ。せき、箸。」
ピックを端に置き、箸を渡してたこ焼きをお皿に載せる。たこ焼き機から離してもほこほこと湯気をたてていた。ソースとマヨネーズ、かつお節をかけてふたりで食べてみる。
「あむ。」
「はむ...ほあっちぃ!?」
可愛く頬張るえるとは裏腹に、あまりの熱さに耐えかねずお皿に戻すせき。
「ぅわ汚ったね!」
一度口に入れたたこ焼きを皿に戻すという、何とも行儀の悪い行動をとってしまった。で、でもしょうがなくない!?口があの熱さを受け付けなかったの!…うぅ、恥ずかしい...
「ご、ごめんごめん..」
「…あー、せき猫舌だったよな。冷ましてから食えよ。ほら、二つに分けてこうして…」
俺のたこ焼きを半分に割って見せるえる。こうゆう所は本当に優しい。やっぱり好きだなぁ...
「そろそろいいんじゃね?」
そんなことを考えてぼーっとしていたらえるにつつかれた。
お皿を見ると既にたこ焼きの湯気は消えている。
まずいまずい、ついついぼーっとしていた。この妄想癖はどーにかならんのか...。
「えっ!あっ、そーかな!」
「なんだよ、まだ熱いのか?ふーふーしてあーん♡してあげた方がいい?」
「なっ!?」
いいです!と、たこ焼きを一口で頬張るせき。えるはすぐ恥ずかしいことを言う!全くこっちの身にもなってほしいよ...と、心の中でため息をついた。
丁度いい温度になったたこ焼きの味はとても美味しかった。
「あっ、美味しい...美味しい!える!」
「言わんでも分かる。」
呆れたようにたこ焼きを食べるえる。でもそんなこと気にしていなかった。初めての味。何だろう、お店のとはまた違う…でも凄く美味しい!
と、感動しながらまた次のたこ焼きをお皿に乗せ、半分に割り冷ましているとえるに話しかけられる。
「たこパ楽しい?」
「うん!」
笑顔で正直に答えると、えるは笑いながら視線を上にあげた。
「またたこパするかぁ」
「!うん!!」
そう呟くえるに素直に喜ぶせき。
えるとの初体験がまたひとつ増えた。
「チーズ...チーズ...あぁ、またタコだ!!」
「www」
たこ焼きを食べるにあたり中々チーズが当たらない俺は、チーズをあまり食べることなくお腹いっぱいになってしまった。
くそっ、今度やる時はチーズを探せる能力を身につけなくては…!
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